境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
以下の文章を読んで,各設問に答えよ。A県は,平成10年に,「産業廃棄物処理施設の設置に係る手続に関する条例」を制定し,これを施行した。その中では,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)の下で許可対象になる産業廃棄物最終処分場に関し,これを計画する事業者に対して,同法に基づく申請の前に,次の諸事項が義務付けられていた。
①
事業計画書の地元市町村への送付
②
地元住民を対象とする説明会の開催
③
地元市町村及び地元住民から提出される意見書の受領
④
意見書に対する見解書の公表
⑤
見解書に対する再意見書の受領と再見解書の公表
⑥
これらを踏まえた事業者主催の討論会の開催
⑦
以上の手続の状況の知事への報告A県B町において産業廃棄物最終処分場(安定型)を計画しているC社(A県知事から産業廃棄物処理業の許可を得ている。)は,廃棄物処理法に基づく許可申請を目指し,前記A県条例に基づいて,B町や地元住民に対して真摯に対応した。その結果,地下水汚染を懸念する一部の地元住民からは,合意を得られなかったものの,やり取りを通じて,B町及び大多数の地元住民の了解を取り付けることができた。そこで,廃棄物処理法に基づいて許可申請をしたところ,平成11年にA県知事から産業廃棄物最終処分場の設置許可を取得できた。
〔設問1〕廃棄物処理法の平成9年改正においては,「住民参加を取り入れた」と評される規定が導入されている。その背景事情と必要性については,改正法案の前提となった審議会の報告書において,【資料】のように説明されていた。それにもかかわらず,改正法制定後の平成10年にA県が上記条例を制定したことには,どのような事情があると考えられるか。A県の立場に立って,複数の視点から,①改正法の限界,②条例手続の必要性について論ぜよ。なお,いわゆる地方分権改革及び条例の適法性については,考慮しないこととする。
【資料】厚生省生活環境審議会廃棄物処理部会産業廃棄物専門委員会『今後の産業廃棄物対策の基本的方向について』(平成8年9月)「最終処分場等産業廃棄物処理施設の設置に当たっては都道府県知事の許可を受けることとなっているが,現行の廃棄物処理法上,技術上の基準に適合していることと最終処分場について災害防止のための計画が定められていることが要件となっているものの,直接,住民等とのかかわり合いに係る規定は設けられていないことから,要綱等においてこれを補完する対応がなされているところである。施設の円滑な設置を進めていくためには,施設の設置に伴う地域の生活環境への影響に十分に配慮し,悪影響を及ぼさないものであることについて住民の十分な理解を得ていくことは重要であり,法律上,施設の設置の許可に至る手続の中に,住民等の理解を得ていくための仕組みを設けることが必要である。このため,施設を設置しようとする者は施設の立地に伴う生活環境への影響を調査し,その結果を都道府県が事業計画と併せて公告・縦覧に付すとともに,関係住民や市町村の意見を聴取する等の手続を法令で明確に定めるべきである。
その際,専門家により審査する機関を設けるなどにより,事業の内容や生活環境への影響を客観的に審査できる仕組みを導入すべきである。」
〔設問2〕C社が建設に取り掛かろうとしたところ,最後まで反対をした一部住民から,処分場の操業により有害物質を含む汚水が漏出し,それによって日常的に飲用している井戸水が汚染される可能性が高いことを理由に,C社に対して,建設の差止めを求める訴訟が提起された。C社は,「A県知事の許可を得ているし,廃棄物処理法の諸基準を遵守して操業するから問題はない。」,「有害物質を含む汚水漏出,被害発生,因果関係の存在は,住民側で立証すべきだ。」と主張している。この主張に対して,住民の代理人として,どのような主張を展開することができるか。
〔第2問〕(配点:50)
Aは,B県内にある自ら所有する土地(以下「本件土地」という。)で工場(以下「本件工場」という。)を操業し,トリクロロエチレンを用いてきたが,平成11年12月に本件工場の使用を廃止し,遊休地とした。平成13年12月,Aは,本件土地をCに売却した。平成22年6月,Cは,本件土地にマンションを建設するために大規模な土地開発工事をする際,B県知事の処分に基づく義務により,指定調査機関Dに委託して調査をしたところ,トリクロロエチレンに関して,汚染状態についての環境省令で定める基準値を超過していた。そして,その汚染土壌を掘削し除去するには40億円,封じ込めるには5億円の費用が掛かることが見積もられた。その後,同年8月,B県知事は,本件土地を要措置区域に指定し,Cに対して封じ込め措置を採るよう指示したところ,Cはマンションの分譲を円滑に行うために,40億円掛けて掘削除去をし,平成23年1月に除去工事を完了した。なお,平成3年には土壌汚染の環境基準が策定され,平成6年に告示改正によって環境基準項目にトリクロロエチレンが追加されていた。現在は平成23年5月であることを前提とし,以下の各設問に答えよ。なお,水質汚濁防止法及び商法上の問題については考慮しないこととする。
〔設問1〕⑴Cが本件土地の開発工事の際,調査をしなければならなかった理由を説明せよ。⑵大規模な開発工事の場合を土壌汚染の調査の契機とする制度は,最近になって導入されたものである。その必要性について説明せよ。
〔設問2〕Cは,Aに対して,どのような根拠に基づいて,どのような請求ができるか。