境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
A社は,B県C村内にある自社敷地において,水質汚濁防止法に基づき,テトラクロロエチレンを液体状態で貯蔵する地下タンク(以下「本件地下タンク」という。)を設置しようとしている。この場合において,【資料】を参照しつつ,以下の問いに答えよ。
〔設問1〕水質汚濁防止法は,2011年改正によって,本件地下タンクの設置のように,公共用水域に排水をしない行為を規制した。このような行為を規制することの妥当性について,環境法の基本的考え方を2つ挙げ,その観点から説明せよ。
〔設問2〕A社の担当者Dは,2013年1月9日に,事前相談のためにB県の担当課に協議に出向いたところ,同課は,かねてより,E内水面漁業協同組合(以下「E組合」という。)からの設置反対陳情を受けていたために,Dに対して,E組合の同意書を取得の上,これを添付して届け出るように指導した。A社は,何度も同意書の取得を試みたが,成功しなかった。同意書の取得は不可能と判断したA社は,2013年10月9日に,B県担当課宛てに,配達証明付郵便で,水質汚濁防止法上必要とされる届出書及び関係書類一式を送付し,同郵便は,同月10日に配達された。しかし,3日後,「水質汚濁防止法上必要とされる届出書及び関係書類一式は配達されたが,なおE組合の同意書が添付されていない。このため,届出はまだ完了していない。同意書の取得についてさらなる努力を期待する。」という趣旨の手紙と一緒に,送付したものがそのままA社に返送されてきた。A社はどのように対応しようかと思案していたが,結局本件地下タンクを設置することを決意した。ただ,A社の代表取締役Fは,水質汚濁防止法のもとで刑事責任を問われることを懸念し,2013年12月1日に弁護士Gのもとを訪れ,2014年1月以降に設置することについて意見を求めた。Gは,「設置に問題はない。」旨を述べた。Gがこのように答えた理由について論ぜよ。
〔設問3〕その後,本件地下タンクは,適法に設置された。ところが,テトラクロロエチレンを含む水の受入れをしている際に,A社従業員のバルブ操作のミスが原因で,本件地下タンクから,テトラクロロエチレンを含む水が大量にあふれ出し,事業場の地下に浸透した。B県の調査によって,敷地境界において,地下水環境基準を大幅に超過する地下水汚染が確認された。事業場の隣地には,飲用井戸があり,現在も利用されている。B県知事は,本件地下タンクの使用,及び地下水の汚染に関して,A社に対し,水質汚濁防止法上,どのような措置を講ずることができるかを説明せよ。
【資料】
水質汚濁防止法施行令(昭和46年6月17日政令第188号)(抜粋)
(カドミウム等の物質)
第2条
法第2条第2項第1号の政令で定める物質は,次に掲げる物質とする。一カドミウム及びその化合物二シアン化合物三有機燐化合物(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名パラチオン),ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名メチルパラチオン),ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)四鉛及びその化合物五六価クロム化合物六砒素及びその化合物七水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物八ポリ塩化ビフェニル九トリクロロエチレン十テトラクロロエチレン十一ジクロロメタン十二四塩化炭素十三一・二―ジクロロエタン十四一・一―ジクロロエチレン十五一・二―ジクロロエチレン十六一・一・一―トリクロロエタン十七一・一・二―トリクロロエタン十八一・三―ジクロロプロペン十九テトラメチルチウラムジスルフイド(別名チウラム)二十二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―s―トリアジン(別名シマジン)二十一S―四―クロロベンジル=N・N―ジエチルチオカルバマート(別名チオベンカルブ)二十二ベンゼン二十三セレン及びその化合物二十四ほう素及びその化合物二十五ふつ素及びその化合物二十六アンモニア,アンモニウム化合物,亜硝酸化合物及び硝酸化合物二十七塩化ビニルモノマー二十八一・四―ジオキサン
(有害物質貯蔵指定施設)
第4条の4
法第5条第3項の政令で定める指定施設は,第2条に規定する物質を含む液状の物を貯蔵する指定施設とする。水質汚濁防止法施行規則(昭和46年6月19日総理府・通商産業省令第2号)(抜粋)
(有害物質使用特定施設等に係る構造基準等)
第8条の2
法第12条の4の環境省令で定める基準は,次条から第8条の7までに定めるとおりとする。
(使用の方法)
第8条の7
有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の使用の方法は,次の各号のいずれにも適合することとする。一次のいずれにも適合すること。イ有害物質を含む水の受入れ,移替え及び分配その他の有害物質を含む水を扱う作業は,有害物質を含む水が飛散し,流出し,又は地下に浸透しない方法で行うこと。ロ有害物質を含む水の補給状況及び設備の作動状況の確認その他の施設の運転を適切に行うために必要な措置を講ずること。ハ有害物質を含む水が漏えいした場合には,直ちに漏えいを防止する措置を講ずるとともに,当該漏えいした有害物質を含む水を回収し,再利用するか,又は生活環境保全上支障のないよう適切に処理すること。二前号に掲げる使用の方法並びに使用の方法に関する点検の方法及び回数を定めた管理要領が明確に定められていること。
〔第2問〕(配点:50)
甲県乙市は,青い海とサンゴ礁が美しく観光業が盛んである。乙市在住のAは,同市においてホテル(以下「本件ホテル」という。)を経営し,また,同市を訪れる観光客に対し,業として,体験ダイビングや同市近海のクルージングを実施している。本件ホテルの部屋の海側の窓から見える景色は絶景であると評判であり,多くの観光客をひきつけてきた。乙市には国定公園(以下「本件国定公園」という。)が存在し,同公園内には特別地域のほか,サンゴ礁が多数見られる海域に海域公園地区の区域が存在する。Aは乙市内での環境保護活動を行うためにNPO法人Bを設立し,Bは公園管理団体の指定を受けている。その後,観光業を営むCが,本件国定公園の特別地域内に,適法な許可を得て新たに5階建てのリゾート施設の建設工事を開始した。甲県知事の許可に際し,工事の施工に当たって汚濁防止膜を設置する等の措置を講じて周辺水域に赤土を流出させないことが条件とされていた。しかし,Cの工事の施工は上記許可条件に反するずさんな対応にとどまり,その結果,工事に伴う赤土の流出によりサンゴが既に一部死滅したほか,残るサンゴについても今後の更なる工事の進行により死滅が懸念される状況にある。Cの工事開始に伴い本件国定公園を訪れる観光客の減少が見られ,Aの売上げも減少している。また,Aは,同施設の建設により本件ホテルの部屋の海側の窓から景色が全く見えなくなることも心配している。
〔設問1〕Aは,C及び甲県に対してどのような法的手段をとることが考えられるか。
〔設問2〕本件国定公園内に風景が美しい土地を所有しているDは,自己の土地の風景を長く保存したいと考え,NPO法人Bに相談に来た。Dの要望に応えるために,Bは法律上のどのような制度を活用できるか。その制度が法律上規定されていることの意味はどこにあるか。
〔設問3〕乙市の対岸にある甲県丙町には国立公園が存在し,その中のサンゴ礁が美しい海域は海域公園地区に指定されているが,そこでは,乙市とは逆に観光客が増大し,観光船の無秩序なクルージング,水上バイクの頻繁な走行,一部のマナーの悪いダイバーの行為により,サンゴの損傷その他野生生物への影響が問題となっている。かかる行為を規制するために,環境大臣は行政上の措置を講ずることを検討している。どのような措置が考えられるか。制度の趣旨を踏まえて論ぜよ。