境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
総合建設業者であるA社は,同社が元請け施工する全てのマンション建設現場から排出される産業廃棄物(特別管理産業廃棄物ではない。)の収集運搬及び中間処理を,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づいて,B県知事からそれぞれに係る産業廃棄物処理業の許可を受けたC社に委託していた。この場合において,【資料】を参照しつつ,以下の設問に答えよ。なお,設問はいずれも,独立したものである。
〔設問1〕A社は,産業廃棄物の排出に当たって,C社に対して,紙の産業廃棄物管理票(以下「マニフェスト」という。)を適切に交付し,写しの送付を確認していた。ところが,交付したマニフェストについて,収集運搬に係る写しは適切に送付されてきていたものの,2005年5月頃から,中間処理に係る写しは,C社からの適時の送付が滞り始め,2008年からは,半年分が一度に送られてくるようになった。しかし,A社は,これまで特段の問題は発生していなかったことから,それについて何の対応もせず放置していた。そうしたところ,C社が当該マニフェストに係る産業廃棄物を不法投棄していることが明らかになった。C社は,利潤追求に走る余り,A社以外からも,その処理能力を超える産業廃棄物の処理を受託しており,処理施設に運搬した後,処理しきれない産業廃棄物を,A社と取引があったDが所有する土地(以下「本件土地」という。)に投棄していたのであった。C社は,Dからは資材置場として用いるという名目で本件土地を賃借していた。Dは,一度本件土地に行った際に,産業廃棄物らしいものが投棄されていると気付いてはいたが,賃料収入があることから,C社の行為を黙認していた。本件土地の隣には,農民Eの畑があり,農作物を栽培している。不法投棄量が増えるにつれて,不法投棄された産業廃棄物に起因する異臭のする液体が,Eの畑に流入するようになった。2010年5月になって,農作物への影響を心配するEが当該液体を採取して調査会社に持ち込んだところ,0.1mg/lの鉛(なお,土壌の汚染に係る環境基準値は,0.01mg/l以下である。)が検出された。驚いたEは,同年6月,B県知事に通報した。この事実を確認したB県知事は,四囲の状況から判断して,原因は本件土地に不法投棄された産業廃棄物であると考えている。この場合において,B県知事は,廃棄物処理法上,どのような法的措置を講ずることができるかを説明せよ。なお,C社に対する法的措置については考えなくてよい。
〔設問2〕A社は,産業廃棄物の処理の委託先を,C社から,C社と同様の許可を受けたF社に変更した。ほどなく,A社の経営が,極度に悪化してきた。そこで,A社は,F社に対して,委託料金の大幅な値引きを求めるようになった。その額は,B県内での同種処理の平均的料金の40%であった。最初は難色を示していたF社であったが,同社も業績が悪化していたし,処理委託される産業廃棄物の量が多いためにそれなりの利益は得られると考え,結局はA社の要求を受け入れた。そして,新たな契約に基づき,2012年5月頃から,以前の料金の40%の価格で処理を受託していた。このような料金では,適正処理は無理なことが程なく判明したが,値上げ交渉は困難と考え,契約条件を変えないままでいた。A社のマンション工事現場からは,産業廃棄物が排出され続けている。収集運搬後の処理に困ったF社は,2013年5月頃から,中間処理はしたという虚偽のマニフェストの写しをA社に送付する一方で,B県内の山林に産業廃棄物を不法投棄するようになった。2015年1月になって,F社は事実上倒産したため,A社の委託は停止された。不法投棄されたA社の産業廃棄物は,相当の高さに積み上がっている。この不法投棄地のすぐそばには,かねてより地元住民が日常的に散策を楽しんでいた遊歩道がある。堆積された産業廃棄物の一部が,遊歩道上に少しずつ崩落している状態にある。この場合において,B県知事は,廃棄物処理法上,どのような法的措置を講ずることができるか。この措置が設けられた趣旨を踏まえつつ論ぜよ。
【資料】
○廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年9月23日厚生省令第35号)(抜粋)
(管理票の写しの送付を受けるまでの期間)
第8条の28
法第12条の3第8項の環境省令で定める期間は,次の各号に掲げる区分に応じ,それぞれ当該各号に定めるものとする。一法第12条の3第3項前段又は第4項前段の規定による管理票の写しの送付管理票の交付の日から90日(特別管理産業廃棄物に係る管理票にあつては,60日)二法第12条の3第5項又は第12条の5第5項の規定による最終処分が終了した旨が記載された管理票の写しの送付管理票の交付の日から180日○環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長「行政処分の指針について(通知)」(平成25年3月29日環廃産発第1303299号)(抜粋)⑶排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき,当該処理が行われることを知り,又は知ることができたときその他法第12条第7項,第12条の2第7項及び第15条の4の3第3項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき(同条第1項第2号)
①
「適正な対価を負担していないとき」とは,不適正処理された産業廃棄物(中間処理後の産業廃棄物にあっては事業活動に伴って生じた段階からのすべての産業廃棄物)を一般的に行われている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて著しく低廉な料金で委託すること(実質的に著しく低廉な処理費用を負担している場合を含む。)をいうものであること。「適正な対価」であるか否かを判断するに当たっては,まずは都道府県において,可能な範囲内でその地域における当該産業廃棄物の一般的な処理料金の範囲を客観的に把握すること。そして,その処理料金の半値程度又はそれを下回るような料金で処理委託を行っている排出事業者については,当該料金に合理性があることを排出事業者において示すことができない限りは,「適正な対価を負担していないとき」に該当するものと解して差し支えないこと。なお,当該処理料金の半値程度よりも高額の料金で処理委託をした場合においても,これに該当する場合があることは言うまでもないことから,排出事業者が一般的な料金よりも安い価格で委託しても適正処理がなされると判断した理由について,随時報告徴収を実施するなどして把握するように努めること。
〔第2問〕(配点:50)
A社は,B県内の土地(以下「本件土地」という。)を所有している。本件土地では長らくC社が化学工場(有害物質使用特定施設が設置されている。)を操業していたが,A社は本件土地をC社から2013年に購入した。その後,A社は同工場を自ら操業することなく閉鎖した。ところが,A社が同工場を解体して本件土地を更地にした際に土壌汚染対策法第3条第1項に基づく調査をしたところ,砒素による汚染が発見された。調査を受託した会社によれば,砒素による汚染の程度は,土壌汚染対策法第6条第1項第1号の環境省令で定める基準を超えていた。この汚染はC社の化学工場の操業によって発生したものと考えられる。C社は汚染のおそれを認識していたため,A社の本件土地の購入価格はその市場価格よりも著しく安かった。本件土地の西隣にはD井戸があり,住民E及びFが飲用に供してきた。A社から本件土地の汚染について報告を受けたB県知事が2014年にD井戸を調査したところ,水質汚濁に係る環境基準の1000倍の砒素が検出された。この場合において,以下の設問に答えよ。
〔設問1〕B県知事は,誰に対してどのような法的措置を講ずることができるか。
〔設問2〕D井戸から西に100メートルのところにG井戸がある。本文において,B県は2010年の時点で,法定の水質汚濁状況の監視作業を通じて,G井戸から水質環境基準の100倍の砒素が検出された事実を把握していたとする。しかし,B県はこれを自然由来の局所的汚染であると即断し,近くにD井戸が存在している事実を把握していたにもかかわらず,更なる原因究明のための調査も付近の井戸の調査も行わず,また,周辺住民への周知もしなかった。本文における2014年のD井戸の調査結果を踏まえ,更にB県知事が調査した結果,2015年になって,D井戸にもG井戸にも本件土地からの汚染が広がっていたことが判明した。EはD井戸の水を長年飲んだことによって末梢神経に異常をきたしており,また,そのことを知ったFは自分もいつ発症するかと考え不安な日々を送っている。この場合において,E及びFは,誰に対してどのような請求ができるか。なお,時効については考えなくてよい。