境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
次の【設例】を読んで、以下の各小問について答えなさい。なお、各小問はいずれも独立したものである。
【設例】
A県に所在する甲土地は、過去に貯木場として使用されていたが、その事業において使用されていた砒素が甲土地の土壌内に放置されたまま、貯木場は廃止され、その後埋め立てられるなどして整地され、近年は運送事業を行うXが甲土地を所有し、事業場として使用している。Xは競合他社との競争力強化のため甲土地に新たな大規模事業場の建設を計画した。Xの予定している新たな大規模事業場は、地上5階のトラックターミナルの建設を伴うものであり、その建設工事においては、5000平方メートルの土地を掘削する工事や地盤改良等のための土砂の搬出・搬入作業が予定されるものであった。Xは建設に先立って甲土地の土壌汚染の調査を実施したところ、土壌の汚染に係る環境基準を超える砒素が検出された。そこで、Xは上記調査結果をA県知事に報告したところ、A県知事は、甲土地を土壌汚染対策法に基づく規制対象区域として指定した。なお、甲土地内では井戸は設けられておらず、甲土地周辺の土地においても地下水を飲用水として使用している状況は確認されていなかった。
【小問】
⑴
【設例】において、Xは、新たな事業場の建設に先立って甲土地の土壌汚染の調査を実施しているが、この調査は、XがA県知事に土壌汚染対策法上のある届出を行ったことがきっかけとなり行われたものであった。この届出とはどのようなものか。土壌汚染対策法上、当該届出を要するとされている理由とともに説明しなさい。⑵甲土地の土壌汚染の調査の結果、甲土地について、土壌の汚染に係る環境基準を超える砒素が検出されたものの、健康被害が生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準には該当しないと判断できる場合、A県知事はいかなる区域の指定をすることが考えられるか。根拠条文を挙げつつ、説明しなさい。⑶⑵の区域の指定がなされた場合、甲土地についてどのような規制が課されることになるか。
【設例】においてXが甲土地上で予定している建設工事の作業内容を踏まえて説明しなさい。⑷仮に、甲土地の土壌汚染が、貯木場で使用されていた砒素由来ではなく、自然由来の砒素による場合、⑶で説明した規制に違いが生じることがある。その違いを1つ挙げた上で、そのような違いが設けられている理由とともに説明しなさい。⑸Xは、甲土地について不動産価格の評価への影響も踏まえて汚染土壌の掘削除去をしようと考え、他の対策方法を検討することもなく、自主的に汚染土壌を掘削し除去した。仮に、Xが汚染原因者をYと特定することができ、XがYに対し民法第709条に基づく不法行為責任を問うことが可能であるとした場合、XはYに対し甲土地の汚染土壌の掘削除去費用を全額請求することができるか。土壌汚染対策法における汚染除去等の対策についての考え方を明らかにしつつ、説明しなさい(時効については触れなくてよい。)。
【資料】
○土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)(抜粋)(法第4条第1項の土地の形質の変更の届出の対象となる土地の規模)
第22条
法第4条第1項の環境省令で定める規模は、3000平方メートルとする。(略)
〔第2問〕(配点:50)
以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕太陽光発電事業者Aは、B県にある甲川沿いに所有する土地(以下「本件土地」という。)に、太陽光発電施設乙の設置工事の事業を計画している(以下「乙事業」という。)。本件土地は、B県甲川流域保全条例において、甲川の生態系や景観を保全することが重要な地区として指定された区域内にあり、文化財保護法上の重要文化的景観として選定された区域に隣接している。Aは、乙事業が環境影響評価法(以下「法」という。)の第二種事業に該当するため、法第4条第1項に基づき、乙事業の概要を経済産業大臣に届け出た。⑴経済産業大臣が、乙事業について環境影響評価を行う必要があると判定するのはどのような場合か述べなさい。⑵法に、第一種事業のほかに、第二種事業の類型が設けられた理由を説明しなさい。
〔設問2〕設問1の手続を経て、乙事業について法の規定による環境影響評価を行うことになったAは、環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)を作成した。Aは、法の規定による環境影響評価の場合、方法書の環境影響評価の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れる必要はないと考えたため、方法書には、これを記載しなかった。この点について住民からの批判的な指摘があることを重く見たB県知事は、臨時の公聴会を開催した。その公聴会の場において、地元の歴史研究者からも同様の指摘がなされたことを受けて、B県知事は、方法書について、環境影響評価の項目に、歴史的・文化的環境についても含めるべきであるとの意見を述べた。Aは、B県知事の意見を取り入れる形で、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法を選定した。B県議会は、この件を教訓として、法に基づく環境影響評価手続を条例で拡充するための検討を開始した。⑴Aが、法の規定による環境影響評価の場合、方法書の環境影響評価の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れる必要はないと考えた理由について、環境基本法の関連規定にも触れつつ説明しなさい。その上で、条例により、法の規定による環境影響評価の方法書の項目に歴史的・文化的環境などの人工的環境要素を入れることを、事業者に義務付けることが、法に抵触するか否か論じなさい。⑵法の規定による環境影響評価の場合、環境の保全の見地からの意見を有する者の意見について事業者が負う手続的義務は、方法書の段階と環境影響評価準備書の段階ではどのように異なっているか説明しなさい。その上で、条例により、法の規定に基づきB県知事が方法書について環境の保全の見地からの意見を述べるに当たり、公聴会を開催することを、B県知事に義務付けることが、法に抵触するか否か論じなさい。
〔設問3〕B県甲川流域保全条例は、甲川の生態系や景観を保全することが重要な地区として指定された区域内で工作物の建築等を行う者に対して、B県知事の許可を受けることを義務付けている。そして、同条例は、当該許可の基準の一つとして、工作物の建築等により当該土地及びその周辺における生態系及び景観を著しく悪化させるおそれがないことを定めている。また、同条例は、B県知事が当該許可をしようとするときは、あらかじめ、工作物の建築等が行われようとする土地が属する地域の住民の意見を聴くものと定めている。Aは、B県知事に対して乙の設置の許可を申請し、B県知事はこれを許可した。
本件土地が属する地域の住民であり、長年にわたって甲川の良好な景観を保全する活動を続けてきたCは、乙の建設及び運営によって甲川の景観が損なわれることを憂慮している。Cが、B県を被告として乙の設置の許可の取消しを求める訴訟を提起する場合、当該訴訟において、訴訟要件に関してどのような主張をすることが考えられるか。解答に当たっては、B県の反論を踏まえつつ、論じなさい。また、問題文中に挙げたもの以外に、条例の内容は考慮しなくてよい。