境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
Aは,平成20年4月1日,S県所在の甲土地を所有者のBから,同年7月1日,甲土地に隣接する乙土地を所有者のCから,それぞれ購入した。この場合において,以下の各設問に答えよ。
〔設問1〕AとBは,甲土地の売買契約(以下「甲売買契約」という。)において,下記条項のとおり合意していたことから,Aは,甲土地について,その購入後,土壌汚染対策法(以下,単に「法」という。)第2条第2項にいう土壌汚染状況調査と同等の土壌汚染調査を行った。その結果,同条第1項にいう特定有害物質であるPについて,法第6条第1項第1号に規定する環境省令で定める基準に適合しないことが判明したため,Aは,Bに対し,平成22年6月1日,甲売買契約第10条第2項に基づき,甲土地の汚染対策費用の支払を求める訴えを提起するに至った。Bとしては,Pが自然由来物質であることから,甲売買契約第10条第2項にいう汚染対策費用を負担すべき場合に当たらないと考えている。なお,法は,土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成21年4月24日法律第23号)により改正され,平成22年4月1日に施行されているところ,同改正に際して,環境省水・大気環境局長から【資料】の通知が発出されている。また,Pは,甲売買契約締結時,既に法第2条第1項にいう特定有害物質であった。以上の場合において,AのBに対する甲土地の汚染対策費用の支払請求が認められるかについて,想定できるAの主張とBの反論を説明した上で,論ぜよ。
【甲売買契約の関係条項】
第10条
本物件には,土壌汚染対策法第3条第1項が定める有害物質使用特定施設に係る工場でないものが設置されていたため,売主は,同工場由来の土壌汚染が存在し得ないことを理由に,土壌汚染の調査を行わず,土壌汚染の調査は,買主の負担により実施するものとする。
2土壌汚染調査の結果,環境省の指定基準に適合しない土壌汚染があった場合,買主は汚染の態様及び範囲並びに汚染対策の方法及び費用を売主に明示し,売主は汚染対策費用を買主に支払うものとし,買主は自ら汚染対策を行うものとする。
【資料】
○環境省水・大気環境局長発都道府県知事・政令市長宛「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」(平成22年3月5日環水大土発第100305002号)(抜粋)旧法〔注:平成21年法律第23号による改正前の土壌汚染対策法〕においては,「土壌汚染」は,環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定する,人の活動に伴って生ずる土壌の汚染に限定されるものであり,自然由来の有害物質が含まれる汚染された土壌をその対象としていなかったところである。しかしながら,法〔注:平成21年法律第23号による改正後の土壌汚染対策法〕第4章において,汚染土壌(法第16条第1項の汚染土壌をいう。以下同じ。)の搬出及び運搬並びに処理に関する規制が創設されたこと並びにかかる規制を及ぼす上で,健康被害の防止の観点からは自然由来の有害物質が含まれる汚染された土壌をそれ以外の汚染された土壌と区別する理由がないことから,同章の規制を適用するため,自然由来の有害物質が含まれる汚染された土壌を法の対象とすることとする。
〔設問2〕Aは,乙土地を購入後,当面,駐車場として一般の利用に供していたところ,駐車場利用者からS県職員に対して乙土地で異臭がするとの通報があった。そこで,S県知事は,法第5条第1項に基づき,乙土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について,Xに対し,指定調査機関に調査をさせて,その結果を報告すべきことを命じた。当該土壌汚染状況調査の結果,乙土地の土壌において,法第2条第1項に規定する特定有害物質であるQについて,法第6条第1項第1号に規定する環境省令で定める基準に適合しないことが判明した。これを受けて,Aは,Cに対し,乙土地の売買契約を解除する旨の意思表示をしたが,土壌汚染の除去措置等を回避したいCは,解除は無効であるとして争い,AとCとの間で乙土地の所有権の帰属をめぐる訴訟が係属するに至った。⑴乙土地について,人の健康に係る被害が生ずるおそれがあるにもかかわらず,AもCも何ら対策を採らない場合,S県知事は,その被害を未然に防止するため,法に基づいてどのような措置を採ることができるか。⑵S県は,AとCの間の上記訴訟において,乙土地の所有権がCに帰属する旨の判決が確定した後,Cに対し,⑴の措置に要した費用として当該費用相当額の支払を請求した。ところが,S県が請求した費用のうちには,第三者が乙土地に不適法に埋めた産業廃棄物の処理費用が含まれていたため,Cは,これについては,自分が負担する理由がないとして,S県の請求を争った。このCの主張の当否について場合を分けて論ぜよ。
〔第2問〕(配点:50)
広域で飲食店事業を展開しているA株式会社では,鮮度が落ちて調理に適しなくなった生鮮食品や利用客の食べ残した食品を廃棄物処理業者に外部委託して焼却処分しているが,その委託量を節減することが全社的な課題となっている。そのため,各店舗から節減の案ないし実例を募集したところ,甲店,乙店及び丙店から以下のような内容の応募があった。甲店「利用客がそれぞれ自分の好きな料理を自由に選べるバイキング方式を導入したい。食材別の仕入れ量の管理がしやすくなる上に,利用客の食べ残しも減り,廃棄食品を相当量減らすことができるものと見込まれる。」乙店「乙店では,生鮮野菜を仕入れている契約農家Bから,廃棄することとなる食品を堆肥の原料として譲ってもらいたいとの申入れがある。譲ってもらえるのであれば,乙店への生鮮野菜の卸値を割り引くと言っており,廃棄物処理の外部委託費用ばかりか仕入原価も節減できるのであるから,こんなに良い話はない。」丙店「丙店は複合商業施設ビルに出店しているが,同ビルでは,入居テナント向けに共同利用の厨芥物(生ごみ)処理設備が提供されている。設備に生ごみを投入すると,発酵処理されて相当部分がバイオガスとなり,ビル内の電力源として用いられるという仕組みであり,一部は廃棄物として残るものの,施設ビル全体からの排出量は大幅に減るというものである。設備利用及び電力利用のための負担金は支払わなければならないが,これに廃棄物の処理を共同で外部委託する費用の分担金を加えても,丙店から出る廃棄食品の全量の処理をそのまま外部に委託するよりも,全体として廉価となっている。」この場合において,【資料】を参照しつつ,以下の各設問に答えよ。
〔設問1〕甲店,乙店及び丙店から応募のあった案ないし実例は,循環型社会形成推進基本法上の基本原則を踏まえて見た場合,それぞれどのような点において優れていると言えるか,関係条文に触れつつ,説明せよ。
〔設問2〕A株式会社の取締役会において,甲店,乙店及び丙店から応募のあった内容の当否及び有用性が議事に諮られたところ,取締役Cから,「乙店の提案は,他店でも容易にできることであり積極的に推進していくべきである。」との意見が述べられた。あなたがA株式会社のいわゆる社外取締役である弁護士だとして,法的観点から見たCの意見の問題点を,その理由及び当該問題点が解消されるための条件を述べつつ,説明せよ。
〔設問3〕結局,乙店は,B及び肥料製造会社であるD株式会社との間で,乙店の廃棄食品をD株式会社で堆肥として精製し,これをBが利用して生産された生鮮野菜を乙店が仕入食材として用いるという枠組みを合意し,これが実行に移された。乙店,B及びD株式会社にとって,このような枠組みを合意し,実行することによって,それぞれ循環型社会形成推進基本法上の事業者の責務をどのように果たしていることになるか,関係条文に触れつつ,説明せよ。
【資料】
○廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)(抜粋)
(産業廃棄物)
第2条
法第2条第4項第1号の政令で定める廃棄物は,次のとおりとする。一紙くず(以下略)二木くず(以下略)三繊維くず(以下略)四食料品製造業,医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物四の二と畜場法(昭和28年法律第114号)第3条第2項に規定すると畜場においてとさつし,又は解体した同条第1項に規定する獣畜及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律
(平成2年法律第70号)第2条第6号に規定する食鳥処理場において食鳥処理をした同条第1号に規定する食鳥に係る固形状の不要物五ゴムくず六金属くず七ガラスくず,コンクリートくず(工作物の新築,改築又は除去に伴つて生じたものを除く。)及び陶磁器くず八鉱さい九工作物の新築,改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物十動物のふん尿(畜産農業に係るものに限る。)十一動物の死体(畜産農業に係るものに限る。)十二大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第2条第2項に規定するばい煙発生施設,ダイオキシン類対策特別措置法第2条第2項に規定する特定施設(中略)又は次に掲げる廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであつて,集じん施設によつて集められたものイ~ト(略)十三燃え殻,汚泥,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類,前各号に掲げる廃棄物(第1号から第3号まで,第5号から第9号まで及び前号に掲げる廃棄物にあつては,事業活動に伴つて生じたものに限る。)又は法第2条第4項第2号に掲げる廃棄物を処分するために処理したものであつて,これらの廃棄物に該当しないもの