境法]
[環境法]
〔第1問〕(配点:50)
A県を流れるB川上流域には農村地帯が広がっており,中流域には大小多数の旅館やホテルが立ち並ぶ観光地がある。そして,B川は,下流域の人口密集地と河口部の電気めっき工場の集積地を通り,A県最大の内湾であるC湾に流れ込んでいる。現在,C湾においては,人の健康の保護に関する環境基準に関しては,カドミウム,全シアン等,全項目について基準を達成している。これに対し,生活環境の保全に関する環境基準に関しては,水域の利用目的に関し,水浴,自然環境保全等を目的としてA類型に指定されている海域Dにおいて,化学的酸素要求量(COD)について基準を達成していない。また,自然環境保全等を目的としてⅠ類型に指定されている海域Eにおいて,全窒素と全燐について基準を達成していない。さらに,水生生物の生息状況に関し,水生生物の産卵場等として生物特A類型に指定されている海域Fにおいて,全亜鉛について基準を達成していない。
〔設問1〕水質の汚濁に係る環境上の条件について,人の健康の保護に関する環境基準と生活環境の保全に関する環境基準とでは,基準の設定の仕方がどのように異なるかについて,【資料1】も参照しつつ,その理由も含めて説明しなさい。
〔設問2〕A県においては,従来,水質汚濁防止法第3条第1項に基づく排水基準が適用されてきた。しかし,C湾において,COD,全窒素及び全燐に関する環境基準が一部海域において未達成であるという状況は20年以上にわたって続いており,その発生源は,水質汚濁防止法の特定事業場のほか,生活排水,農地等であると考えられている。また,全亜鉛については,水生生物保全の観点から,平成18年に同条同項に基づく亜鉛の排水基準が強化されたものの(5mg/lから2mg/l),電気めっき業については,この基準に直ちに対応することが困難であるとして,現在に至るまで同条同項に基づく環境省令の附則による暫定排水基準(5mg/l)が適用されている。A県は,C湾において,COD,全窒素,全燐及び全亜鉛の環境基準を達成するため,従来の対策に加え,どのような措置を採ることができるか。水質汚濁防止法の規定を踏まえ,
【資料2】も参照しつつ論じなさい。
〔設問3〕水質汚濁に係る環境基準が設定されていない物質Pについて,近年,発がん性と催奇形性があるとの研究結果が相次いで報告されている。そこで,環境団体等が国に対して環境基準の設定及び規制を求めているが,未だ実現していない。Pを含む水を排出している特定事業場が多数存在しているA県G市が,条例により独自の排水基準を設定することの可否について,水質汚濁防止法の規定を踏まえて論じなさい。
【資料1】
○水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年12月28日号外環境庁告示第59号)(抜粋)
第1
環境基準
公共用水域の水質汚濁に係る環境基準は,人の健康の保護および生活環境の保全に関し,それぞれ次のとおりとする。
1人の健康の保護に関する環境基準人の健康の保護に関する環境基準は,全公共用水域につき,別表1の項目の欄に掲げる項目ごとに,同表の基準値の欄に掲げるとおりとする。
2生活環境の保全に関する環境基準⑴生活環境の保全に関する環境基準は,各公共用水域につき,別表2の水域類型の欄に掲げる水域類型のうち当該公共用水域が該当する水域類型ごとに,同表の基準値の欄に掲げるとおりとする。⑵水域類型の指定を行うに当たつては,次に掲げる事項によること。ア水質汚濁に係る公害が著しくなつており,又は著しくなるおそれのある水域を優先すること。イ当該水域における水質汚濁の状況,水質汚濁源の立地状況等を勘案すること。ウ当該水域の利用目的及び将来の利用目的に配慮すること。エ当該水域の水質が現状よりも少なくとも悪化することを許容することとならないように配慮すること。オ目標達成のための施策との関連に留意し,達成期間を設定すること。カ
(略)
第3
環境基準の達成期間等環境基準の達成に必要な期間およびこの期間が長期間である場合の措置は,次のとおりとする。
1人の健康の保護に関する環境基準これについては,設定後直ちに達成され,維持されるように努めるものとする。
2生活環境の保全に関する環境基準これについては,各公共用水域ごとに,おおむね次の区分により,施策の推進とあいまちつつ,可及的速かにその達成維持を図るものとする。⑴現に著しい人口集中,大規模な工業開発等が進行している地域に係る水域で著しい水質汚濁が生じているものまたは生じつつあるものについては,5年以内に達成することを目途とする。
(以下,略)
⑵水質汚濁防止を図る必要のある公共用水域のうち,(1)の水域以外の水域については,設定後直ちに達成され,維持されるよう水質汚濁の防止に努めることとする。別表1
(略)
別表2
生活環境の保全に関する環境基準
1河川
⑴河川(湖沼を除く。)
(略)
⑵湖沼
(略)
2海域
(略)
*別表2のうち,海域に関する部分の概要⑴利用目的の適応性等に応じ,以下の水域類型の欄が掲げられている。アCOD等5項目についてA,B,Cの3類型イ全窒素,全燐についてⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの4類型ウ全亜鉛等3項目について生物A,生物特Aの2類型⑵上記各水域類型ごとの基準値の欄に掲げられている基準値として,以下のようなものがある。アA類型(水浴,自然環境保全等を利用目的とする水域)CODの基準値2mg/l以下イⅠ類型(自然環境保全等を利用目的とする水域)全窒素の基準値
0.2mg/l以下全燐の基準値
0.02mg/l以下ウ生物特A類型(水生生物の産卵場等として特に保全が必要な水域)
全亜鉛の基準値
0.01mg/l以下
【資料2】
○水質汚濁防止法施行令(昭和46年政令第188号)(抜粋)
(特定施設)
第1条
水質汚濁防止法(以下「法」という。)第2条第2項の政令で定める施設は,別表第1に掲げる施設とする。
(水素イオン濃度等の項目)
第3条
法第2条第2項第2号の政令で定める項目は,次に掲げる項目とする。一水素イオン濃度二生物化学的酸素要求量及び化学的酸素要求量三~六
(略)
七亜鉛含有量
八~十一
(略)
十二窒素又はりんの含有量(以下,略)
2(略)
(排水基準に関する条例の基準)
第4条
法第3条第3項の政令で定める基準は,水質の汚濁に係る環境上の条件についての環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の基準(以下「水質環境基準」という。)が定められているときは,法第3条第3項の規定による条例(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)第3条第1項の規定により指定された対策地域における農用地の土壌の同法第2条第3項の特定有害物質による汚染を防止するため水質環境基準を基準とせず定められる条例の規定を除く。)においては,水質環境基準が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を定めることとする。別表第1(第1条関係)一~六十五
(略)
六十六電気めつき施設
六十六の二
(略)
六十六の三
旅館業(旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定するもの(下宿営業を除く。)をいう。)の用に供する施設であつて,次に掲げるものイちゆう房施設ロ洗濯施設ハ入浴施設六十六の四~七十四
(略)
○排水基準を定める省令(昭和46年総理府令第35号)(抜粋)
(排水基準)
第1条
水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号。以下「法」という。)第3条第1項の排水基準は,同条第2項の有害物質(以下「有害物質」という。)による排出水の汚染状態については,別表第1の上欄に掲げる有害物質の種類ごとに同表の下欄に掲げるとおりとし,その他の排出水の汚染状態については,別表第2の上欄に掲げる項目ごとに同表の下欄に掲げるとおりとする。*別表第2の概要排水基準を定める省令第1条にいう「その他の排出水の汚染状態」について,水質汚濁防止法施行令第3条が掲げる項目が上欄に掲げられ,これに対応し,水素指数又は排出水一定単位当たりの許容量により定められた許容限度が下欄に掲げられている。同表の備考2では,同表に掲げる排出基準は,1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メートル以上である工場又は事業場に係る排出水について適用するとされている。附則
(平成18年11月10日環境省令第33号)(抜粋)
(施行期日)
第1条
この省令は,平成18年12月11日から施行する。
(経過措置)
第2条
附則別表の上欄に掲げる項目につき同表の中欄に掲げる業種に属する特定事業場(水質汚濁防止法第2条第6項に規定する特定事業場をいう。以下この条及び次条において同じ。)から公共用水域に排出される水(以下「排出水」という。)の汚染状態についての水質汚濁防止法第3条第1項に規定する排水基準(以下単に「排水基準」という。)については,この省令の施行の日(中略)から15年間は,第1条の規定による改正後の排水基準を定める省令(中略)第1条の規定にかかわらず,それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
2(略)
3(略)
*附則(平成18年11月10日環境省令第33号)別表の概要電気めっき業等3業種について,亜鉛含有量の許容限度を5mg/lとする暫定基準が掲げられている。
〔第2問〕(配点:50)
Aは,B県に所在し,エアコンやテレビ等の使用済み家庭用電気機器(以下「家電機器」という。)を集めて,その中から金属類を取り出し,再資源化する業者である。Aの再資源化工場は田地を転換して建設したものであって,周囲は今も田地であり稲作が行われている。
〔設問1〕Aは,家電機器を解体する際に生じる大量の廃プラスチック片を,今までは廃棄していたが,これを再資源化することを思い付いた。しかし,廃プラスチック片には有害物を含む多くの不純物が混ざっており,そのままでは資源として使うことのできない性質のものであった。そのため,再資源化のためには特殊な加工が必要であり,かつ,資源として使用可能なものは,廃プラスチック片の全体量のほんの一部にすぎなかった。そこで,自ら再資源化のための加工設備を持っていなかったAは,別の再資源化業者Cに費用を支払って廃プラスチック片の加工を委託した。CはAから受け取った廃プラスチック片を他の者から入手したものと混同させることなく加工し,資源として使用可能になったプラスチックのペレットを,廃プラスチック片の加工から生じる残渣とともにAに引き渡すこととした。AがCに廃プラスチック片の加工を委託することについて,廃棄物の処理及び清掃に関する法律上,どのような考慮が必要か。AがCに委託することなく自ら廃プラスチック片を加工処理する場合との異同を念頭に置いて論じなさい。
〔設問2〕⑴Aは,自らの再資源化工場の処理能力を超えて家電機器を集め続けていたため,Aの工場敷地内には,解体されないままの家電機器が山積みになっていた。そして,Aによる家電機器の保管が適正ではなかったため,人の健康又は生活環境に係る被害が生じ得る状態にある。B県知事がAに対して採り得る措置について論じなさい。⑵その後,Aの工場敷地内で山積みになっていた家電機器は更に放置され,再資源化のための処理がなされないまま,原形をとどめない程度にまで劣化・変色し,その下から液体が染み出して,Aの工場に接する農業用の用水路に流れ込んでいる状態になった。Aの工場敷地内に放置された家電機器は,鉛,水銀,アンチモン,砒素,カドミウム等の有害物質を含むものであり,Aの工場の周囲の田地で稲作に従事している農家のDらは,染み出している液体に含まれる有害物質が生育中の稲を汚染することを危惧し,B県の環境担当部局に相談した。この場合,B県知事としては,Aに対してどのような措置が採れるか,また,DらはAに対して,いかなる法的請求が可能かを論じなさい。