判例
民法民法判例百選Ⅲ第3版38
認知無効等請求事件
認知者の死亡後における認知無効の訴え
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告補助参加人代理人設楽作巳の上告理由第一点及び第二点について
親子関係は身分関係の基本となる法律関係であり、認知に係る親子関係が真実に反するときは、認知によつて生じた法律効果について存在する現在の法律上の紛争の解決のために、被認知者には、当該親子関係が存在しないことを確定することについて法律上の利益があるから、認知者が死亡した後であつても、認知無効の訴えの提起を許容することが相当であり、この場合において、認知無効の訴えの相手方たる地位は、婚姻の無効又は取消しにおける相手方の地位と同様に、一身専属的なものであつて承継の対象とならないので、人事訴訟手続法二条三項の規定を類推適用して、認知者が死亡した後は検察官をもつて相手方とすべきものと解される。したがつて、認知者が死亡した後においても、被認知者は検察官を相手方として認知無効の訴えを提起することができると解するのが相当であり、以上の解釈と異なる大審院判例(大審院昭和一六年(オ)第四七二号同一七年一月一七日判決・民集二一巻一号一四頁)は、変更されるべきである。
そうすると、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
その余の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官
大内恒夫
裁判官
角田禮次郎
裁判官
佐藤哲郎
裁判官
四ツ谷巖
裁判官
大堀誠一