判例
行政法行政法判例百選Ⅱ第8版151
不作為の違法確認等
開発許可に係る公共施設管理者の同意
全文
主 文
原判決中上告人敗訴部分を破棄し、右部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
原判決中、原判決添付の同意及び協議申立目録一、三及び五記載の書面をもってした申立てに係る同意の履行請求に関する部分を破棄し、第一審判決中右部分を取り消し、右請求に係る被上告人の訴えを却下する。
本件附帯上告を棄却する。
第一項に係る控訴費用及び上告費用、第二項に係る訴訟の総費用並びに附帯上告費用は、被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人田村彰平の上告理由第一点の一ないし三について
都市計画法(以下「法」という。)三二条は、開発行為の許可(以下「開発許可」という。)を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意を得なければならない旨を規定する。そして、法三〇条二項は、開発許可の申請書に、右の同意を得たことを証する書面を添付することを要することを、法三三条一項は、申請に係る開発行為が同項各号の定める基準に適合しており、かつ、その申請の手続が法又は法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならないことを規定している。
右のような定めは、開発行為が、開発区域内に存する道路、下水道等の公共施設に影響を与えることはもとより、開発区域の周辺の公共施設についても、変更、廃止などが必要となるような影響を与えることが少なくないことにかんがみ 事前に、 、開発行為による影響を受けるこれらの公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件とすることによって、開発行為の円滑な施行と公共施設の適正な管理の実現を図ったものと解される。そして、国若しくは地方公共団体又はその機関(以下「行政機関等」という。)が公共施設の管理権限を有する場合には、行政機関等が法三二条の同意を求める相手方となり 行政機関等が右の同意を拒否する行為は、 、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。したがって、開発行為を行おうとする者が、右の同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、右の同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない。もとより、このような公法上の判断について、立法政策上、一定の者に右判断を求める権利を付与し、これに係る行為を抗告訴訟の対象とすることも可能ではあるが、その場合には、それに相応する法令の定めが整備されるべきところ、法及びその関係法令には、法三二条の同意に関し、手続、基準ないし要件、通知等に関する規定が置かれていないのみならず、法の定める各種処分に対する不服申立て及び争訟について規定する法五〇条、五一条も、右の同意やこれを拒否する行為については何ら規定するところがないのである。
そうしてみると、公共施設の管理者である行政機関等が法三二条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分には当たらないものというべく、被上告人が原判決添付の同意及び協議申立目録(以下「目録」という。)一、三及び五記載の書面をもってした同意の申立てにつき、上告人が法三二条所定の同意を拒否した行為の取消しを求める被上告人の訴えは、不適法として却下されなければならない。これと異なる原審の判断には、法令の解釈を誤った違法があり、右の違法は、原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中、上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、右部分につき、被上告人の訴えを却下した第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。
なお、この場合、右部分に係る請求が認容されることを解除条件として、民法四一四条二項ただし書に基づき、目録一、三及び五記載の書面をもってした申立てに係る同意の履行を請求する被上告人の三次的請求を棄却した第一審判決に対する被上告人の控訴の当否について、審理、判断をしなければならないが、右の三次的請求に係る訴えは、権利義務の主体となり得ない行政機関に対し、民事上の義務として同意の履行を請求するものであるから、不適法であって、その欠缺は補正することができないものというべきである。このような場合には、原判決の右の三次的請求に関する部分を破棄し、右請求を棄却した第一審判決を取り消し、右請求に係る訴えを却下するのが相当である。
附帯上告代理人荒木貢の上告理由について
公共施設の管理者である行政機関等が法三二条所定の同意を拒否する行為が抗告訴訟の対象となる処分に当たらないことは前記説示のとおりであるから、被上告人が目録一、三及び五記載の書面をもってした同意の申立てにつき、上告人が何らの処分をしないことが違法であることの確認を求める訴えは、不適法というべきであって、右訴えを不適法として却下した原審の判断は、結論において正当である。また、目録一、三及び五記載の書面をもってした申立てに係る同意の履行を請求する訴えを不適法として却下すべきことも前記説示のとおりであるから、右請求を認容することを求める附帯上告は失当である。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、三八六条、九六条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官
三好達
裁判官
大堀誠一
裁判官
小野幹雄
裁判官
高橋久子