判例
民事訴訟法民事執行・保全判例百選第3版96
取立金請求事件
仮差押えの効力(2)
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人飯野昌男の上告受理申立て理由第2点について
1 本件は,金銭債権を差し押さえた債権者の第三債務者に対する取立訴訟であって,原審が適法に確定した事実関係の概要は次のとおりである。
上告人は,株式会社D(以下「債務者」という。)に対して有する請負代金債権を保全するため,債務者が被上告人に対して有する請負代金債権(以下「本件被差押債権」という。)について仮差押命令を得,同命令は,平成9年5月3日,被上告人に送達された。上告人は,上記仮差押命令の執行の本執行として本件被差押債権の一部(以下「本件債権」という。)につき差押命令を得,同命令は,同11年6月29日,被上告人に送達され,上告人は取立権を取得した。その後,上告人は上記仮差押命令の申立て及びその執行の申立てを取り下げたが,被上告人は,上記本執行までの間に,債務者に対する弁済等により本件債権を全額消滅させていた。
2 金銭債権に対する仮差押命令の送達を受けた第三債務者は,債権者との関係において被差押債権につき債務者への弁済を禁止され(民事保全法50条1項),これをしてもその弁済をもって債権者に対抗することができない。この効力は,仮差押命令及びその執行(以下,併せて「仮差押え」という。)により生ずるものであって,仮差押えが存続する限り存続し,仮差押えが消滅すれば消滅する。そして,このことは本執行が開始された後も変わらないものと解するのが相当である。したがって,【要旨】債権の仮差押え後本執行による差押えの効力が生ずるまでの間に第三債務者が被差押債権を弁済した場合において,債権者が仮差押えを取り下げたときは,仮差押えによって第三債務者につき生じていた上記弁済禁止の効力はさかのぼって消滅し(民事保全法7条,民訴法262条1項),第三債務者は被差押債権の弁済をもって債権者に対抗することができることになる。
3 原審の判断は以上と同旨であって,正当である。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官
亀山継夫
裁判官
河合伸一
裁判官
福田博
裁判官
北川弘治
裁判官
梶谷玄