判例
知的財産法商標・意匠・不正競争判例百選第2版112
審決取消請求事件
比較広告——実験の信頼性
全文
主 文
原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判「特許庁が無効2005-80104号事件について平成17年7月22日にした審決を取り消す 」との判決。。
第2 事案の概要本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,被告の無効審判請求を受けた特許庁により,本件特許を無効とする旨の審決がなされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
1 特許庁における手続の経緯
( )1 本件特許(甲第7号証)特許権者:アテンションシステム株式会社(原告)発明の名称: 個人確認システム」「特許出願日:平成9年7月29日(特願平9-219085)設定登録日:平成12年8月25日特許番号:特許第3103327号( )2 本件手続審判請求日:平成17年4月4日(無効2005-80104号)審決日:平成17年7月22日審決の結論: 特許第3103327号の請求項1ないし3に係る発明について「の特許を無効とする 」。審決謄本送達日:平成17年8月4日(原告に対し )。
2 本件発明の要旨
審決が対象とした発明 特許請求の範囲の請求項1~3に記載された発明であり( ,以下,これを「本件特許発明1」などという。なお,請求項の数は3個である )。の要旨は,以下のとおりである。( )1 本件特許発明1「 自己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携帯通信機,前記記憶手段から前記呼び出し番号を読み出すための読出手段と通信手段とを有する端末機,および前記呼び出し番号と前記携帯通信機の持ち主の暗証コードとを関連付けて記憶したコンピュータを含み,前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出されたのち前記端末機から前記コンピュータに前記呼び出し番号が送信され,前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され,前記携帯通信機から暗証コードを前記コンピュータに送信することにより前記コンピュータにおいて前記呼び出し番号と関連付けて記憶された前記暗証コードと照合され,前記コンピュータで前記暗証コードが照合された結果が前記端末機に送信される,個人確認システ
ム 」。
( )2 本件特許発明2
「 前記コンピュータに記憶された前記暗証コードと前記携帯通信機から送信された前記暗証コードとが一致したことに対応して,前記端末機に金額データが入力され,前記端末機から前記金額データが前記コンピュータに送信される,請求項1に記載の個人確認システム 」。
( )3 本件特許発明3
「 前記コンピュータに記憶された前記暗証コードと前記携帯通信機から送信された前記暗証コードとが一致したことに対応して,前記端末機において現金の授受が行われ,前記現金の授受に伴う金額データが前記端末機から前記コンピュータに送信される,請求項1に記載の個人確認システム 」。
3 審決の理由の要点
審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件特許発明1~3は,
( )1 特開平8-221482号公報(審決及び本訴とも甲第1号証)及び特開平9-55803号公報(公開日:平成9年2月25日。審決及び本訴とも甲第2号証)にそれぞれ記載された発明及び従来周知の技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであり,
( )2 また,特開平8-125766号公報(審決及び本訴とも甲第5号証)に記載された発明及び従来周知の技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明1~3に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであって,同法123条1項2号により無効であるというものである(以下,上記( )の理由を「無効理由1」といい,上記( )の理由を「無効理由2」という1 2 。)。1.甲各号証に記載された発明
(1)甲第1号証について
甲第1号証(特開平8-221482号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。・「【請求項12】 顧客から取引の請求があった場合に,暗証番号を決めて当該顧客に通知するとともに,この暗証番号と当該顧客の所有する携帯用無線端末の呼出し番号を記録する手段と,顧客が持参してくる携帯用無線端末の呼出し番号を入力し,記録しておいた呼出し番号と一致するか否かを確認する手段と,前記呼出し番号の一致が確認された場合,顧客が持参してきた携帯用無線端末の認証を行うため,当該呼出し番号に基づきキーワードを対応する携帯用無線端末に送信し,顧客が持参してきた携帯用無線端末が当該キーワードを受信するか否かを確認する手段と,上記キーワードの一致が確認された場合,顧客の認証を行うため,その顧客から暗証番号を受け入れ,記録しておいた暗証番号と一致するか否かを確認する手段と,上記暗証番号の一致が確認された場合,対応する取引物を出す手段とを具備したことを特徴とする取引物引渡しシステム 」。・「【0011】図1に示すように,本実施例では,例えば携帯電話1a,1b,1cが利用されるものとする。これら携帯電話1a,1b,1cは,それぞれの顧客が所有するものである。各携帯電話1a,1b,1cは,自己の電話番号(呼出し番号)やその他の情報を内蔵メモリ(図示せず)に記憶しており (以下略 」, )・「【0013】情報処理装置3は,例えばチケット等の商品を販売する業者が所有するものである。この情報処理装置3は,上記通信網2を介して顧客から取引の請求を受けると,その顧客の所有する携帯電話の電話番号を入力して,メモリ31に登録する。この際,情報処理装置3は,その取引内容(引き渡すべき取引物の内容等)を示すための取引情報を作成し,上記電話番号とともに登録する 」。・「【0014】また,後で対応する取引物を引渡す時の顧客の認証を確実にするため,上記情報処理装置3は上記取引の際に暗証番号を決めて,顧客本人にこれを通知する。また逆に,上記取引の際に暗証番号を顧客に自由に指定させるようにしてもよい。この暗証番号は,上記電話番号とともにメモリ31に登録されることになる 」。・「【0020】各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,顧客の持参する携帯電話の認証を行うため,取り付けられた携帯電話から上記カメラ23やマイク24を介してその電話番号を入力するとともに,この電話番号に基づいて上記メモリ31に登録されている各顧客の電話番号を検索し,一致するものが存在するか否かを調べる 」。・「【0021】また,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,いま取り付けらている携帯電話が本当に上記電話番号に相当するものなのかどうかをさらに調べる。すなわち,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,当該電話番号に基づいて対応する携帯電話を呼出し,続いてその携帯電話にキーワードを送信することによって,顧客の持参する携帯電話が当該キーワードを受信するかどうかを確認する 」。・「【0023】また,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,いま目の前にいる顧客が本当にその携帯電話の所有者であるのかどうかを調べる。すなわち,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,顧客に暗証番号を入力キー22(図2)により入力させ,一致するかどうかを確認する。このとき,入力される暗証番号が上記電話番号とともにメモリ31に登録されている暗証番号と一致する場合には,正真の顧客であると判断する。したがって,上記暗証番号は,顧客の認証を行うために使用されるものである 」。・「【0024】このように,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,電話番号の一致,キーワードの一致,さらに必要があれば暗証番号の一致を確認した後に,取引物を出す 」。・「【0029】次に,顧客は,自己の携帯電話1aを,例えば取引物引渡し装置4aの設置されている所まで持参する(ステップS35 。顧客は,取引物引渡し装置4aの指示に従い,)携帯電話1aを取り付け,その携帯電話1aに備えられるボタン等を押してその電話番号をディスプレイ上に表示させるか,又は,スピーカから音声として発音させる。これにより,この電話番号はカメラ23又はマイク24を介して入力される(ステップS36)。」
したがって,甲第1号証には,次の発明が記載されている(以下 「甲第1号証発明」とい,う。)。
「自己を呼び出すための電話番号(呼出し番号)を記憶した記憶手段を有する携帯電話,前記記憶手段に記憶した前記電話番号(呼出し番号)を手動によりディスプレイ上に表示した後にこれを読み取る読取手段と通信手段とを有する取引物引渡し装置,および前記電話番号(呼出し番号)と前記携帯電話の持ち主の暗証番号とを関連付けて記憶した情報処理装置を含み,前記取引物引渡し装置の前記読取手段によって前記携帯電話の前記記憶手段に記憶された前記電話番号(呼出し番号)が取引物引渡し装置に入力され,前記電話番号(呼出し番号)によって前記取引物引渡し装置から前記携帯電話が呼び出され,入力キーから暗証番号を前記取引物引渡し装置に入力することにより前記取引物引渡し装置において前記電話番号(呼出し番号)と関連付けて記憶された前記暗証番号と照合され,情報処理装置に記憶された前記暗証番号と前記入力キーから入力された前記暗証番号とが一致したことに対応して,端末機が取引物を出す,個人確認システム 」。
(2)甲第2号証について
甲第2号証(特開平9-55803号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。・「【0008 【発明の実施の形態】図1は,本発明の一つの実施例を説明する図である。以】下,図に従い具体的に説明する。図1(A)に示すように,発信端末11が情報センタ(または特定着信者)12への発信を行うと,交換機15は発信者ID取得蓄積装置13に接続し,発信端末11の発信者IDを取得蓄積すると共に,暗証番号発生装置16に暗証番号発生を依頼し,暗証番号を受け取る。そして,受け取った暗証番号を発信者IDと関連づけて蓄積する。その後,トーキートランク14に暗証番号を通知し,発信端末11との接続をトーキートランク14に移す。トーキートランク14では,発信端末11と接続されると発信者ID取得蓄積装置13から受け取った暗証番号をトーキーに変換し,発信端末11に通知する 」。・「【0009】その後,交換機15は,発信端末11を切断状態にした後,情報センタ12へ発信し,発信者ID取得蓄積装置13に蓄積された,発信端末11の発信者IDと,発信端末11へ通知した暗証番号を通知する。暗証番号をトーキーで受け取った発信端末11では,発信者が自分で記憶するか,もしくは端末内に記憶させておく 」。・「【0010】次に,図1(B)に示すように,情報センタ12がコールバックする時は,情報センタ12から,交換機15が通知した発信者IDをもとにコールバック要求した発信端末11を着信端末として呼び出す処理を行う。呼び出された発信端末11は受話器を取る等の動作で通信状態になる。通信状態になると,情報センタ12またはコールバック要求元の発信端末11は,それぞれ交換機15から通知された暗証番号を用いて相手端末,送受信情報を確認,選択した後,コールバックの処理を行う 」。・「【0011】例えば,情報センタ12から回線接続後,情報センタ12がトーキーにて暗証番号を着信者に通知し,着信者が,それを聞いた後,対応する情報を選択し送出する。また例えば,情報センタ12から回線接続後,情報センタ12が暗証番号を着信者に要求し,着信者にPB等で暗証番号を入力させることで認証し対応する情報を選択して送出する。この暗証番号による認証は,情報センタ12側が行うようにしてもよく,コールバック要求をした端末側が行うようにしてもよい。サービスの内容に応じて決めることができる 」。・「【0012 【発明の効果】以上説明したように,本発明により複数のコールバックを要求】した端末側では,コールバック要求後,どのコールバックの呼かを判断するために,面倒な判別をする必要がなく,かつ端末内の情報が間違って取り出されることが回避できる。また,コールバックを行う端末側も,コールバックを要求した端末と端末内の情報の認証が可能になるシステムが実現できるという効果がある 」。
したがって,甲第2号証には,次の発明が記載されている。・ 発信端末から情報センタに発信者IDが送信され,発信者IDによって情報センタから発「信端末が呼び出される,コールバック方法及び交換システム。」(以下,「甲第2号証発明の1」という )。・ 発信端末から暗証番号を情報センタに送信することにより,情報センタにおいて,発信者「IDと関連付けて記憶された暗証番号と照合するコールバック方法及び交換システム。」(以下,「甲第2号証発明の2」という )。
(3)甲第5号証について
甲第5号証(特開平8-125766号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。・「【0031】次に,本実施例の動作について図3及び図4と共に説明する。使用者4はサービスシステム8のサービスの提供を受けようとする場合は,図4に示したPH1と無線処理部83とによる位置登録シーケンス10,パスワード入力のための着呼シーケンス11,及びPH1とゲート84及び85による位置登録シーケンス13に従ってサービスが提供される。なお,図4中,着呼シーケンス11には通話中のPH1からサービスシステム8へのパスワード投入シーケンス12が含まれる 」。・「【0032】位置登録シーケンス10は,第1実施例と同様に例えばRCR標準規格STD-28に従ってなされ,まず,サービスシステム8に対してPH1から位置登録要求が行われる(図4のステップ101 。サービス処理部81はこの位置登録要求を受けると,無線処理)部83を介してPH1に対して認証要求データを無線送信する(図4のステップ102 。こ)の認証要求データの受信によりPH1からはそのPH番号を示す認証応答がサービスシステム8に対してなされる(図4のステップ103)。」・「【0033】サービス処理部81はこの認証応答を無線処理部83を介して入力されると,認証処理部82に処理結果を入力し,認証処理部82でPH1が正当なPHであるか,すなわち不正に製造されたPHではないかどうかを確認する。サービス処理部81はこの認証処理部82からの認証結果が,PH1が正当に製造されたPHであることを示しているときには,位置登録受け付けデータを無線処理部83を介してPH1へ無線送信させる(図4のステップ104)。」・「【0034】続いて,サービス処理部81はPH1からのパスワード入力を行わせるため,無線処理部83を通して無線送信してPH1に着呼させる(図4のステップ110 。PH1)はこの着呼により着呼応答をサービスシステム8に対して行い(図4のステップ111 ,こ)れに応答してサービスシステム8の無線処理部83はPH1に対して呼設定を行う(図4のステップ112)。」・「【0035】この呼設定によりPH1がサービスシステム8に対して呼設定受付通知を行い(図4のステップ113 ,無線処理部83がPH1に対して認証要求を行う(図4のステッ)プ114 。この認証要求により位置登録シーケンス10と同様にPH1からはそのPH番号)を示す認証応答がサービスシステム8に対して行われ(図4のステップ115 ,続いてサー)ビスシステム8と使用者4に対して呼び出しが行われる(図4のステップ116,117)。」・「【0036】使用者4はこの呼び出しに対する応答をPH1を用いてサービスシステム8に対して行う(図4のステップ118)と,サービスシステム8の無線処理部83がPH1に対して応答確認を無線送信する(図4のステップ119 。この応答確認を待って使用者4はパ)スワードをPH1を用いてサービスシステム8に無線送信する(図4のステップ120)。」・「【0037】このパスワードを無線処理部83を介して受信したサービスシステム8のサービス処理部81は,パスワードとPH番号を銀行システム3に送出して銀行システム3により使用者4の正当性を確認させ,かつ,無線処理部83を介してPH1に確認の表示を行わせる。これにより,使用者4は切断処理を行い(図4のステップ121 ,サービスシステム8とP)H1との間で解放及び解放処理が順次に行われる(図4のステップ122,123)。」・「【0038】次に,使用者4がPH1を携帯してゲート84と85の間を通過する際に,ゲート84及び85とPH1との間でRCRの標準規格STD-28で標準化されたPH1とゲート84及び85による位置登録シーケンス13の処理が行われる。すなわち,PH1から発行された位置登録要求信号がサービスシステム8の無線処理部83がゲート84及び85により受信されると(図4のステップ131 ,ゲート84及び85から認証要求が無線送信され)る(図4のステップ132)。」・「【0039】これにより,PH1がゲート84及び85にそのPH番号を示す認証応答データが無線送信される(図4のステップ133 。ゲート84及び85はこの認証応答データを)受信すると,その認証応答データをサービス処理部81を介して認証処理部82に入力し,PH1の正当性を確認させる 」。・「【0040】サービス処理部81はこの認証処理部82からの認証結果が,PH1の正当性を示しているときには,ゲート84及び85を介してPH1に位置登録受付データを無線送信し(図4のステップ134 ,ゲート84及び85のPH1及び使用者4の通過,すなわち入)場を認める。そして,サービス処理部81は使用者4の通過を上記の正当性確認により確認し,銀行システム3にPH1の使用者4の預金口座から入場料の引き落としを要求し,入場料を得る 」。
また,パーソナルハンディホンが自己を呼び出すためのPH番号を記憶した記憶手段を有することは,明らかである。
したがって,甲第5号証には,次の発明が記載されている(以下 「甲第5号証発明」とい,う。)。
「自己を呼び出すためのPH番号を記憶した記憶手段を有するパーソナルハンディホン(以下 「PH」という, 。),前記記憶手段から前記PH番号を読み出すための読出手段と通信手段とを有するサービスシステム,および前記PH番号とPHの使用者のパスワードとにより前記使用者の正当性を確認する銀行システムを含み,前記サービスシステムの前記読出手段によって前記PHの前記記憶手段に記憶された前記PH番号が読み出され,前記PH番号によって前記サービスシステムから前記PHが呼び出され,前記PHからパスワードが前記サービスシステムに送信され,前記サービスシステムから前記パスワードと前記PH番号とが前記銀行システムに送信されることにより前記銀行システムにおいて前記使用者の正当性が確認され,前記銀行システムで前記使用者の正当性が確認されされた(判決注: 確認された」の誤記と認め「る )結果が前記サービスシステムを経てPHに送信され,前記銀行システムにおいて前記使。用者の正当性が確認されたことに対応して,入場を許可し,銀行システムの前記使用者の貯金口座から入場料を引き落とす,個人確認システム 」。2.口頭審理について
被請求人は,口頭審理において,次のとおりに陳述した。
「本件発明は本人認証を呼び出し番号で行い,決済を暗証番号で行う。本人認証できたら自動的に回線が確立する。前記回線は,端末機経由で携帯通信機とコンピュータをつなぐものである 「呼び出し番号」は被請求人が独自に考えた新規な番号である。本件図面の【図1】の。斜めの線(当審の注;携帯通信機の「呼び出し」と「暗証コード送信」を示す線 )は,情報。の流れを示すだけのものである。携帯通信機と端末機とコンピュータをつなぐ回線は専用回線である。すなわち,自分自身の回線である。」(調書参照)
これによると,本件特許発明1における 「呼び出し番号によってコンピュータから携帯通,信機が呼び出され」は 「呼び出し番号によってコンピュータから端末機を経由して携帯通信,機が呼び出され」の意味に,また 「携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信する」,は 「携帯通信機から暗証コードを端末機を経由してコンピュータに送信する」の意味に,そ,れぞれ解釈される。
また,被請求人は 「 呼び出し番号」は被請求人が独自に考えた新規な番号である 」と主,「 。張するが,本件明細書には「呼び出し番号」についての特別な記載はなく,本件明細書の記載からして 「呼び出し番号」を電話番号と解釈することに何の支障もない。,3.無効理由1について,
(1)本件特許発明1と甲第1号証発明との対比,判断
本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると,甲第1号証発明の「電話番号(呼出し番号 」は本件特許発明1の「呼び出し番号」に相当し,以下同様に 「携帯電話」は「携帯通信) ,機」に 「取引物引渡し装置」は「端末機」に 「暗証番号」は「暗証コード」に 「情報処理, , ,装置」は「コンピュータ」に,それぞれ相当し,また,本件特許発明1の「読出手段」及び甲第1号証発明の「読取手段」は,携帯通信機の記憶手段に記憶した呼び出し番号を端末機に入力する点で 「入力手段」といえる。,
したがって,両者は 「自己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携,帯通信機,前記記憶手段に記憶した前記呼び出し番号を入力するための入力手段と通信手段とを有する端末機,および前記呼び出し番号と前記携帯通信機の持ち主の暗証コードとを関連付けて記憶したコンピュータを含み,前記端末機の前記入力手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が端末機に入力され,前記呼び出し番号によって前記携帯通信機が呼び出され,入力された暗証コードが前記呼び出し番号と関連付けて記憶された前記暗証コードと照合される,個人確認システム 」の点で一致し,次の点で相違する。。
[相違点1]
本件特許発明1の「入力手段」は,「記憶手段から呼び出し番号を読み出すための読出手段」であるのに対して,甲第1号証発明の「入力手段」は,記憶手段に記憶した呼び出し番号を手動によりディスプレイ上に表示した後にこれを読み取る読取手段である点。
[相違点2]
本件特許発明1では 「端末機からコンピュータに呼び出し番号が送信され,前記呼び出し,番号によって前記コンピュータから携帯通信機が呼び出され」るのに対して,甲第1号証発明では,呼び出し番号はコンピュータに送信されず,前記呼び出し番号によって端末機から携帯通信機が呼び出される点。
[相違点3]
本件特許発明1では 「携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信することにより前,記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合され,前記コンピュータで前記暗証コードが照合された結果が端末機に送信される」のに対して,甲第1号証発明では,端末機の入力キーから暗証コードを入力することにより前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合される点。
そこで,上記相違点1ないし相違点3について検討する。
相違点1について
甲第1号証発明において,記憶手段に記憶した呼び出し番号を手動によりディスプレイ上に表示した後に,読取手段によりこれを読み取ることに代えて,記憶手段から直接に読み出すようにして,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2について
甲第2号証には,甲第2号証発明の1として,発信端末から情報センタに発信者IDが送信され,発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される,コールバック方法及び交換システムが記載されている。ここで,発信者IDは本件特許発明1の呼び出し番号に相当するものであり,また,発信端末は通信機と,情報センタはコンピュータと言いうるものである。したがって,甲第1号証発明において,呼び出し番号によって携帯通信機を呼び出すに際して,端末機から携帯通信機を呼び出すことに代えて,コンピュータから携帯通信機を呼び出すようにして,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点3について
甲第2号証には,甲第2号証発明の2として,発信端末から暗証番号を情報センタに送信することにより,情報センタにおいて,発信者IDと関連付けて記憶された暗証番号と照合するコールバック方法及び交換システムが記載されている。
したがって,甲第1号証発明において,入力キーから暗証コードを端末機に入力し,前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合することに代えて,携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信し,前記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合するようにして,上記相違点3に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(2)本件特許発明2と甲第1号証発明との対比,判断
本件特許発明2と甲第1号証発明とを対比すると,本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点で一致し,その相違点に加えて,次の点で相違する。
[相違点4]
本件特許発明2では 「コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された,暗証コードとが一致したことに対応して,端末機に金額データが入力され,前記端末機から前記金額データがコンピュータに送信される」のに対して,甲第1号証発明では,コンピュータに記憶された暗証コードと端末機の入力キーから入力された暗証コードとが一致したことに対応して,端末機が取引物を出す点。
そこで,上記相違点4について検討する。
甲第1号証発明において,コンピュータに記憶された暗証コードと端末機の入力キーから入力された暗証コードとを照合することに代えて,コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された暗証コードとを照合することは,上記相違点3についての判断で述べたように,当業者が容易に想到し得たことである。
また,本人確認が得られると,店舗の端末機に代金等の信用取引データが入力され,該データが中央装置に送信されるシステムは,従来周知である(例えば,特開昭61-40669号公報参照。)。
したがって,甲第1号証発明において,上記相違点4に係る本件特許発明2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(3)本件特許発明3と甲第1号証発明との対比,判断
本件特許発明3と甲第1号証発明とを対比すると,本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点で一致し,その相違点に加えて,次の点で相違する。
[相違点5]
本件特許発明3では 「コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された,暗証コードとが一致したことに対応して,端末機において現金の授受が行われ,前記現金の授受に伴う金額データが前記端末機からコンピュータに送信される」のに対して,甲第1号証発明では,コンピュータに記憶された暗証コードと端末機の入力キーから入力された暗証コードとが一致したことに対応して,端末機が取引物を出す点。
そこで,上記相違点5について検討する。
甲第1号証発明において,コンピュータに記憶された暗証コードと端末機の入力キーから入力された暗証コードとを照合することに代えて,コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された暗証コードとを照合することは,上記相違点4についての判断で述べたように,当業者が容易に想到し得たことである。
また,本人確認が得られると,入出金装置において現金の授受が可能となり,現金の授受に伴う金額データが入出金装置から中央処理装置に送信されるシステムは,従来周知である(例えば,特開昭61-269772号公報参照。)。
したがって,甲第1号証発明において,上記相違点5に係る本件特許発明3の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(4)本件特許発明1ないし本件特許発明3が有する作用効果について
本件特許発明1ないし本件特許発明3が有する作用効果は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された事項,並びに従来周知の技術から当業者が予測できた範囲内のものである。
(5)まとめ
本件特許発明1ないし本件特許発明3は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。4.無効理由2について,
(1)本件特許発明1と甲第5号証発明との対比,判断
本件特許発明1と甲第5号証発明とを対比すると,甲第5号証発明の「PH番号」は本件特許発明1の「呼び出し番号」に相当し,以下同様に,「パーソナルハンディホン」又は「PH」は「携帯通信機」に 「サービスシステム」は「端末機」に 「パスワード」は「暗証コード」, ,に 「使用者」は「持ち主」に,また 「銀行システム」は「コンピュータ」に,それぞれ相当, ,する。
したがって,両者は 「自己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携,帯通信機,前記記憶手段から前記呼び出し番号を読み出すための読出手段と通信手段とを有する端末機,および前記呼び出し番号と前記携帯通信機の持ち主の暗証コードとにより持ち主の正当性を確認するコンピュータを含み,前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出され,前記呼び出し番号によって前記携帯通信機が呼び出され,前記呼び出し番号と前記暗証コードとが前記コンピュータに送信され,前記コンピュータにおいて前記持ち主の正当性が確認され,前記コンピュータで前記持ち主の正当性が確認された結果が前記端末機に送信される,個人確認システム 」の点で一致し,次。の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1では 「端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び,出し番号が読み出されたのち前記端末機からコンピュータに前記呼び出し番号が送信され,前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され」るのに対して,甲第5号証発明では,端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出され,前記呼び出し番号によって前記端末機から前記携帯通信機が呼び出される点。
[相違点2]
本件特許発明1では 「端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び,出し番号が読み出されたのち前記端末機からコンピュータに前記呼び出し番号が送信され ,」「携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信する」のに対して,甲第5号証発明では,端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出され,前記携帯通信機から暗証コードが前記端末機に送信され,前記端末機から前記暗証コードと前記呼び出し番号とがコンピュータに送信される点。
[相違点3]
呼び出し番号と携帯通信機の持ち主の暗証コードとによりその持ち主の正当性を確認するために,本件特許発明1では 「呼び出し番号と携帯通信機の持ち主の暗証コードとを関連付け,て記憶したコンピュータを含み ,送信された暗証コードが「コンピュータにおいて呼び出し」番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合され」,「コンピュータで暗証コードが照合された結果が端末機に送信される」のに対して,甲第5号証発明では,このような限定がない点。そこで,上記相違点1ないし相違点3について検討する。
相違点1について
端末機から携帯通信機を呼び出すことと,コンピュータから携帯通信機を呼び出すこととは,携帯通信機を呼び出すことにおいて変わりがない。
また,被請求人の口頭審理における陳述(上記「2 」参照)によると,本件特許発明1に.おいて,コンピュータから携帯通信機を呼び出す場合には,端末機を経由して呼び出すことになる。
したがって,甲第5号証発明において,端末機から携帯通信機を呼び出すことに代えて,コンピュータから携帯通信機を呼び出すようにして,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が必要に応じて適宜に想到し得たことである。
相違点2について
呼び出し番号と携帯通信機から送信された暗証コードとを端末機からコンピュータに送信することと,呼び出し番号を端末機からコンピュータに送信し,暗証コードを携帯通信機からコンピュータに送信することとは,呼び出し番号と暗証コードとをコンピュータに送信することにおいて変わりがない。
また,被請求人の口頭審理における陳述(上記「2 」参照)によると,本件特許発明1に.おいて,暗証コードを携帯通信機からコンピュータに送信する場合には,端末機を経由してコンピュータに送信することになる。
したがって,甲第5号証発明において,呼び出し番号と携帯通信機から送信された暗証コードとを端末機からコンピュータに送信することに代えて,呼び出し番号を端末機からコンピュータに送信するようにして,暗証コードを携帯通信機からコンピュータに送信して,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が必要に応じて適宜に想到し得たことである。
相違点3について
一般に,カードで買い物等の決裁をするシステムにおいて,カードの持ち主の正当性を確認するために,中央のコンピュータがカード番号とカードの持ち主の暗証コードとを関連付けて記憶し,送信された暗証コードと,カード番号と関連付けて記憶した暗証コードとを照合することは,従来周知である。
なお,甲第1号証発明においても,携帯通信機の持ち主の正当性を確認するために,入力した暗証コードと,呼出し番号と関連付けて記憶した暗証コードとを照合している。
したがって,甲第5号証発明において,呼び出し番号と携帯通信機の持ち主の暗証コードとによりその持ち主の正当性を確認するために,上記相違点3に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(2)本件特許発明2と甲第5号証発明との対比,判断
本件特許発明2と甲第5号証発明とを対比すると,本件特許発明1と甲第5号証発明との一致点で一致し,その相違点に加えて,次の点で相違する。
[相違点4]
本件特許発明2では 「コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された,暗証コードとが一致したことに対応して,端末機に金額データが入力され,前記端末機から前記金額データがコンピュータに送信される」のに対して,甲第5号証発明では,コンピュータにおいて携帯通信機の持ち主の正当性が確認されたことに対応して,入場を許可し,コンピュータの前記持ち主の貯金口座から入場料を引き落とす点。
そこで,上記相違点4について検討する。
甲第5号証発明において,携帯通信機の持ち主の正当性を確認するに際して,コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された暗証コードとの一致を見ることは,上記相違点3の判断で述べたように,当業者が容易に想到し得たことである。
また,本人確認が得られると,店舗の端末機に代金等の信用取引データが入力され,該データが中央装置に送信されるシステムは,従来周知である(例えば,特開昭61-40669号公報参照。)。
したがって,甲第5号証発明において,上記相違点4に係る本件特許発明2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(3)本件特許発明3と甲第5号証発明との対比,判断
本件特許発明3と甲第5号証発明とを対比すると,本件特許発明1と甲第5号証発明との一致点で一致し,その相違点に加えて,次の点で相違する。
[相違点5]
本件特許発明3では 「コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された,前記暗証コードとが一致したことに対応して,端末機において現金の授受が行われ,前記現金の授受に伴う金額データが前記端末機からコンピュータに送信される」のに対して,甲第5号証発明では,銀行システムにおいてPHの使用者の正当性が確認されたことに対応して,入場を許可し,銀行システムの使用者の貯金口座から入場料を引き落とす点。
そこで,上記相違点5について検討する。
甲第5号証発明において,携帯通信機の持ち主の正当性を確認するに際して,コンピュータに記憶された暗証コードと携帯通信機から送信された暗証コードとの一致を見ることは,上記相違点4の判断で述べたように,当業者が容易に想到し得たことである。
また,本人確認が得られると,入出金装置において現金の授受が可能となり,現金の授受に伴う金額データが入出金装置から中央処理装置に送信されるシステムは,従来周知である(例えば,特開昭61-269772号公報参照。)。
したがって,甲第5号証発明において,上記相違点5に係る本件特許発明3の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
(4)本件特許発明1ないし本件特許発明3が有する作用効果について
本件特許発明1ないし本件特許発明3が有する作用効果は,甲第5号証に記載された事項及び従来周知の技術から当業者が予測できた範囲内のものである。
(5)まとめ
本件特許発明1ないし本件特許発明3は,甲第5号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第3 原告の主張(審決取消事由)の要点
審決は,無効理由1について,一致点の認定を誤り(取消事由1 ,相違点2,)3についての判断を誤った(取消事由2,3)上,本件特許発明1の顕著な作用効果を看過した(取消事由4)ものであり,また,無効理由2について,一致点の認定を誤り(取消事由5),相違点1,2についての判断を誤った(取消事由6)上,本件特許発明1の顕著な作用効果を看過した(取消事由7)ものであるから,取り消されるべきである。
1 取消事由1(無効理由1に係る一致点の認定の誤り)
審決の無効理由1は,本件特許発明1と特開平8-221482号公報(甲第1号証。以下「引用例1」という )に記載された発明(審決の表記では「甲第1号。証発明 。以下,審決の引用部分を含めて「引用発明1」という )とが 「自己を」 。 ,呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携帯通信機,前記記憶手段に記憶した前記呼び出し番号を入力するための入力手段と通信手段とを有する端末機,および前記呼び出し番号と前記携帯通信機の持ち主の暗証コードとを関連付けて記憶したコンピュータを含み,前記端末機の前記入力手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が端末機に入力され,前記呼び出し番号によって前記携帯通信機が呼び出され,入力された暗証コードが前記呼び出し番号と関連付けて記憶された前記暗証コードと照合される,個人確認システ
ム 」の点で一致すると認定したが,以下のとおり,誤りである。。
( )1 審決は,本件特許発明1の要旨の「呼び出し番号」につき 「本件明細書に,は『呼び出し番号』についての特別な記載はなく,本件明細書の記載からして,『呼び出し番号』を電話番号と解釈することに何の支障もない 」として,引用発明1。の「電話番号(呼出し番号 」が本件特許発明1の「呼び出し番号」に相当すると)した上,上記一致点の認定に及んだが,本件特許発明1の「呼び出し番号」は,原告が独自に考えた新規な番号であって,電話番号ではない。
本件特許発明1においては 「端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の,前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出されたのち前記端末機から前記コンピュータに前記呼び出し番号が送信され,前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され」ることが規定されているところ,携帯通信機と端末機とは,電話回線によって通信状態となっているから,仮に 「呼,び出し番号」が電話番号であるとすると,コンピュータは 「呼び出し番号」によ,って携帯通信機を呼び出すことができなくなってしまう。この点につき,被告は,本件特許発明1の要旨に,端末機の読出手段が呼び出し番号を読み出すに当たり,端末機と携帯通信機が,電話番号によって回線接続されるというような限定はないとか,本件明細書に,端末機の読出手段が呼び出し番号を読み出すに当たり,ホルダーに携帯通信機10をセットし,そのホルダーが端末機12に接続されて,端末機12により,呼び出し番号が読み出される手段が記載されていると主張するが,電話番号により回線接続をする手段では行わないとする限定はなく,また,本件明細書には,ホルダーと接続して行うことのみに限定する記載もない。
「呼び出し番号」は,コンピュータと携帯通信機の両方に記憶されている番号であって,非公開の番号でもある 「呼び出し番号」が非公開であることは,本件明。細書(甲第7号証)の発明の詳細な説明の段落【0022】及び段落【0023】に示唆されているところである。
( )2 また,審決は,本件特許発明1の「読出手段」及び引用発明1の「読取手段」を,「携帯通信機の記憶手段に記憶した呼び出し番号を端末機に入力する点で,『入力手段』といえる 」として,上記( )のとおり,本件特許発明1と引用発明1。 1とが 「記憶手段に記憶した前記呼び出し番号を入力するための入力手段と通信手,段とを有する端末機」,「前記端末機の前記入力手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が端末機に入力され(る 」という点で一)致すると認定したが,引用発明1においては,電話番号を入力手段で入力するが,本件特許発明1においては,端末機12の読出手段によって携帯通信機10の記憶手段に記憶された呼び出し番号を読み出すというように相違しており,審決は,単純に「入力手段」と抽象化すべきではないものを抽象化する誤りを犯している。
2 取消事由2(無効理由1に係る相違点2についての判断の誤り)
審決の無効理由1は,本件特許発明1と引用発明1との相違点2,すなわち,「本件特許発明1では 『端末機からコンピュータに呼び出し番号が送信され,前記呼,び出し番号によって前記コンピュータから携帯通信機が呼び出され るのに対して』 ,引用発明1では,呼び出し番号はコンピュータに送信されず,前記呼び出し番号によって端末機から携帯通信機が呼び出される点」につき,特開平9-55803号公報(甲第2号証。以下「引用例2」という )に 「発信端末から情報センタに発。 ,信者IDが送信され 発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される, ,コールバック方法及び交換システム (審決の表記では「甲第2号証発明の1 。」 」以下「引用発明2-1」という )が記載されており,その「発信者ID」は本件。特許発明1の「呼び出し番号」に相当するものであるとした上 「引用発明1にお,いて,呼び出し番号によって携帯通信機を呼び出すに際して,端末機から携帯通信機を呼び出すことに代えて,コンピュータから携帯通信機を呼び出すようにして,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである 」と判断したが,以下のとおり,誤りである。。
( )1 そもそも,引用発明1は,審決によって本件特許発明1の「端末機」に相当するとされた取引物引渡し装置4a,4b,4cが,同様に「コンピュータ」に相当するとされた情報処理装置3のメモリ31に登録された各顧客の電話番号を検索するものにすぎず,情報処理装置に呼び出し番号を通知することや,まして,当該通知により,情報処理装置に,携帯電話に連絡して本人の確認をさせることなど,他のことを,取引物引渡し装置にさせる技術思想は全く存在していない。
また,引用例2は,コールバック,すなわち,電話で相手を呼び出し,通話の意思を伝えた直後に電話を切り,すぐに相手から電話をかけ直してもらう方法及び交換システムに関するもので,本件特許発明1や引用発明1とは,技術分野が全く異なり,技術的課題も異なっているのみならず,発信端末から呼び出し番号又は電話番号の通知を受けた情報センタが,その呼び出し番号又は電話番号に基づいて,別の発信端末を呼び出し,暗証コードを送信させるという技術的思想は,開示も示唆もされていない。
したがって,引用発明2-1を引用発明1に組み合わせることが容易になし得たとすることはできない。
( )2 本件特許発明1の「呼び出し番号」は,それによってコンピュータが携帯通信機を呼び出し,接続可能とする番号であるのに対し,引用発明2-1の「発信者ID」は,単に発信者を識別するだけの識別符号にすぎず,審決の「発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される」とする引用発明2-1の認定は誤りである。したがって 「発信者ID」が「呼び出し番号」に相当するというこ,とはできない。
3 取消事由3(無効理由1に係る相違点3についての判断の誤り)
審決の無効理由1は,本件特許発明1と引用発明1との相違点3,すなわち,「本件特許発明1では 『携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信することに,より前記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合され,前記コンピュータで前記暗証コードが照合された結果が端末機に送信される』のに対して,引用発明1では,端末機の入力キーから暗証コードを入力することにより前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合される点」につき,引用例2に 「発信端末から暗証番号を情報センタに送信,することにより,情報センタにおいて,発信者IDと関連付けて記憶された暗証番号と照合するコールバック方法及び交換システム (審決の表記では「甲第2号証」発明の2 。以下「引用発明2-2」という )が記載されており 「引用発明1に」 。 ,おいて,入力キーから暗証コードを端末機に入力し,前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合することに代えて,携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信し,前記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合するようにして,上記相違点3に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである 」と判。断した。
しかしながら,引用発明2-2を引用発明1と組み合わせることが容易でないことは,引用発明2-1について上記2の( )で述べたと同様である。1
4 取消事由4(無効理由1に係る顕著な作用効果の看過)
審決の無効理由1は,本件特許発明1に係る下記のような顕著な作用効果を看過して,本件特許発明1が,引用発明1,引用発明2-1,引用発明2-2及び周知技術に基づいて容易に想到し得ると判断したものであるから,その判断は誤りである。
( )1 携帯通信機に入力された暗証コードが,コンピュータにおいてそのコンピュータに記録された暗証コードと照合されるため,携帯通信機に暗証コードを記録しておく必要がなく,たとえ携帯通信機が盗まれたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれはない。
( )2 コンピュータセンターなどにあるコンピュータによって,直接個人確認を行うので,偽造,改竄,不正利用などの犯罪に対し,安全性を確保することができ,また,端末機が数多く設置されたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれはない。
( )3 呼び出し番号として決済のための口座番号を充てるなどして,携帯通信機に決済機能をもたせることや,クレジットカード,その他のカード機能を一つの携帯通信機にもたせることができ,各種カード機能の整理統合を図って,現金やカードを所持していなくとも,携帯通信機から暗証コードを送信して決済ができるし,決済に必要な情報をいつでもどこからでも入手することができる。
5 取消事由5(無効理由2に係る一致点の認定の誤り)
審決の無効理由2は,特開平8-125766号公報(甲第5号証。以下「引用例5」という )に記載された発明(審決の表記では「甲第5号証発明 。以下,審。 」決の引用部分を含めて「引用発明5」という )の「PH番号」が本件特許発明1。の「呼び出し番号」に相当するとした上,本件特許発明1と引用発明5とが 「自,己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携帯通信機,前記記憶手段から前記呼び出し番号を読み出すための読出手段と通信手段とを有する端末機,および前記呼び出し番号と前記携帯通信機の持ち主の暗証コードとにより持ち主の正当性を確認するコンピュータを含み,前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出され,前記呼び出し番号によって前記携帯通信機が呼び出され,前記呼び出し番号と前記暗証コードとが前記コンピュータに送信され,前記コンピュータにおいて前記持ち主の正当性が確認され,前記コンピュータで前記持ち主の正当性が確認された結果が前記端末機に送信される,個人確認システム 」の点で一致すると認定した。。
しかしながら,上記1の( )において,本件特許発明1と引用発明1との一致点1の認定に関して述べたと同様,本件特許発明1の「呼び出し番号」は,原告が独自に考えた新規な番号であって,PH番号ではないから 「PH番号」が「呼び出し,番号」に相当することを前提とする,上記一致点の認定は誤りである。
6 取消事由6(無効理由2に係る相違点1,2についての判断の誤り)
審決の無効理由2は,本件特許発明1と引用発明5との相違点1,すなわち「本件特許発明1では 『端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶され,た呼び出し番号が読み出されたのち前記端末機からコンピュータに前記呼び出し番号が送信され,前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され』るのに対して,引用発明5では,端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出され,前記呼び出し番号によって前記端末機から前記携帯通信機が呼び出される点」につき,「引用発明5において,端末機から携帯通信機を呼び出すことに代えて,コンピュータから携帯通信機を呼び出すようにして,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が必要に応じて適宜に想到し得たことである 」と判断し,さらに,相違点。2,すなわち「本件特許発明1では 『端末機の読出手段によって携帯通信機の記,憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出されたのち前記端末機からコンピュータに前記呼び出し番号が送信され』,『携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信する』のに対して,引用発明5では,端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出され,前記携帯通信機から暗証コードが前記端末機に送信され,前記端末機から前記暗証コードと前記呼び出し番号とがコンピュータに送信される点」については 「引用発明5において,呼び出し番号と,携帯通信機から送信された暗証コードとを端末機からコンピュータに送信することに代えて,呼び出し番号を端末機からコンピュータに送信するようにして,暗証コードを携帯通信機からコンピュータに送信して,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が必要に応じて適宜に想到し得たことである。」と判断した。
しかしながら,本件特許発明1は,顧客が要求するサービスを提供するための端末機とは別に,顧客が個人的に所有する携帯通信機とコンピュータの間で,直接的に個人確認を行うものである。これに対し,引用発明5においては,審決によって本件特許発明1の「端末機」に相当するとされたサービスシステムから,同様に「銀行システム」に相当するとされた銀行システムに対し,PH番号とパスワードが送信されて,個人確認がなされており,パーソナルハンディホン(PH)と,銀行システムとの間において,直接的に個人確認のための情報交換が行われていない。これは,サービスシステムのように,顧客が要求するサービスを提供するための端末機を,個人確認のために使用するものであり,銀行の自動預入支払機などと同じ考え方に基づくものである。したがって,本件特許発明1と引用発明5とは,根本的に技術思想が異なっており,引用発明5の技術から,相違点1,2に係る本件特許発明1の構成を想到することは困難であって,審決の上記相違点1,2についての判断は,誤りである。
7 取消事由7(無効理由2に係る顕著な作用効果の看過)
審決の無効理由2は,本件特許発明1に係る顕著な作用効果を看過し,本件特許発明1が,引用発明5及び周知技術に基づいて容易に想到し得ると判断したものであって,その判断が誤りであることは,無効理由1について上記4で述べたと同様である。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1(無効理由1に係る一致点の認定の誤り)に対し
( )1 原告は,本件特許発明1において,携帯通信機と端末機とは,電話回線によって通信状態となっているから,仮に 「呼び出し番号」が電話番号であるとす,ると,コンピュータは 「呼び出し番号」によって携帯通信機を呼び出すことがで,きなくなってしまうとして 「 呼び出し番号』を電話番号と解釈することに何の支,『障もない 」とした審決の無効理由1に係る認定が誤りであると主張する。。
しかしながら,本件特許発明1の要旨は 「前記端末機の前記読出手段によって,前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出されたのち前記端末機から前記コンピュータに前記呼び出し番号が送信され,前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され 」と規定するのみ,であって,端末機の読出手段が呼び出し番号を読み出すに当たり,端末機と携帯通信機が,電話番号によって回線接続されるというような限定はない。また,回線接続されたとしても,呼び出し番号によってコンピュータが携帯通信機を呼び出すときまで,端末機と携帯通信機の回線接続が保持されているとの限定もなく,これを保持しておく必要もない。したがって,少なくとも 「呼び出し番号」から,携帯,通信機の電話番号を排除する理由はない。なお,本件明細書には,端末機の読出手段が呼び出し番号を読み出すに当たり,電話番号による回線接続でなく,ホルダーに携帯通信機10をセットしそのホルダーが端末機12に接続されて,端末機12によって携帯通信機10のメモリに記憶された呼び出し番号が読み出される手段が記載されている(段落【0014,【0015】)。したがって,原告の上記主張は失当である。
( )2 また,原告は,引用発明1の「読取手段」は電話番号を入力手段で入力するが,本件特許発明1の「読出手段」は,端末機12の読出手段によって携帯通信機10の記憶手段に記憶された呼び出し番号を読み出すものであるから,審決が,本件特許発明1の「読出手段」及び引用発明1の「読取手段」を 「携帯通信機の,記憶手段に記憶した呼び出し番号を端末機に入力する点で,『入力手段』といえる。」としたことが,単純に「入力手段」と抽象化すべきではないものを抽象化する誤りを犯したものと主張する。
しかしながら,引用発明1においては,携帯電話の記憶手段に記憶された電話番号が,カメラやマイクを通じて取引物引渡し装置に読み出されるのであるから,審決が,本件特許発明1の「読出手段」及び引用発明1の「読取手段」を,ともに「入力手段」と認定したことに何らの誤りもない。
2 取消事由2(無効理由1に係る相違点2についての判断の誤り)に対し
( )1 原告は,審決の無効理由1に係る相違点2の判断に対し,引用発明1には,情報処理装置に呼び出し番号を通知することや,当該通知により,情報処理装置に,携帯電話に連絡して本人の確認をさせることなどを,取引物引渡し装置にさせる技術思想は全く存在せず,また,引用例2に記載された発明は,本件特許発明1や引用発明1とは,技術分野が全く異なり,技術的課題も異なっているのみならず,発信端末から呼び出し番号又は電話番号の通知を受けた情報センタが,その呼び出し番号又は電話番号に基づいて,別の発信端末を呼び出し,暗証コードを送信させるという技術思想は,開示も示唆もされていないから,引用発明2-1を引用発明1に組み合わせることが容易になし得たとすることはできないと主張する。
しかしながら,引用発明1においては,取引物引渡し装置も情報処理装置も,商品販売業者等,認証を行う側に属する装置であって,通信回線によって接続されているところ,引用発明1において重要なのは,正当な携帯電話であるか否かを商品販売業者側が確認するために,携帯電話の電話番号によって正当な携帯電話を呼び出すということであり,取引物引渡し装置から携帯電話を呼び出すか,情報処理装置から呼び出すかは,重要ではなく,単なる設計事項である。また,引用例2には,発信端末11を呼び出すための発信端末ID及び暗証番号を受け取った情報センタ12が,受け取った発信端末IDを用いて発信端末11を呼び出し,かつ,その呼び出しによって回線が接続された後に,発信端末11から情報センタに送信される暗証番号を,情報センタにおいて発信端末IDに関連付けて記憶している暗証番号と対比して,認証を行い,認証が得られた場合に,対応する情報を送出するようにしたコールバックシステムが記載されており,かつ,発信端末からの暗証番号の送信に関して,発信者が,記憶している暗証番号を,発信端末のプッシュボタン等を利用して入力する態様も開示されている(段落【0011】)。そうすると,引用例2に記載された発明は,引用発明1と同様,通信手段を用いて個人認証を行うことができるようにしたものであって,同一の技術分野に属するものである。したがって,引用発明2-1を引用発明1に組み合わせることは,当業者にとって,容易になし得たものである。
( )2 また,原告は,引用発明2-1の「発信者ID」は,単に発信者を識別するだけの識別符号にすぎず,審決の「発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される」とする引用発明2-1の認定は誤りであるから 「発信者ID」,が「呼び出し番号」に相当するということはできないと主張する。
しかしながら,引用例2には 「発信者IDをもとにコールバック要求した発信,端末11を着信端末として呼び出す処理を行う。呼び出された発信端末は受話器を取る等の動作で通信状態になる (段落【」 0010】)ことが記載されているから 「発,信者ID」が「呼び出し番号」に相当することは明らかであり,原告の上記主張は理由がない。
3 取消事由3(無効理由1に係る相違点3についての判断の誤り)に対し
原告は,審決の無効理由1に係る相違点3についての判断に対し,引用発明2-1について述べたと同様,引用発明2-2を引用発明1と組み合わせることは容易でないと主張するが,上記2の( )で述べたと同じ理由により,当業者は,引用発1明2-2を引用発明1と組み合わせることが容易になし得たものであり,原告の主張は理由がない。
4 取消事由4(無効理由1に係る顕著な作用効果の看過)に対し,
原告は,審決の無効理由1が,本件特許発明1に係る顕著な作用効果を看過して,本件特許発明1が,引用発明1,引用発明2-1,引用発明2-2及び周知技術に基づいて容易に想到し得ると判断したものであるから,その判断は誤りであると主張する。
しかしながら,以下のとおり,原告の主張する本件特許発明1の作用効果は,格別顕著というわけでもなく,また,本件特許発明1に特有なものでもないから,原告の上記主張は失当である。
( )1 まず,原告は,本件特許発明1には,携帯通信機に暗証コードを記録しておく必要がなく,たとえ携帯通信機が盗まれたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれはないと主張するが,本件明細書には,本件特許発明1において,携帯通信機10に暗証コードを記録させないとする限定はない。また,引用発明1や引用例2に記載された発明においても,携帯電話に暗証コードを記録しておく必要はなく,上記2の( )のとおり,引用例2には,発信者が,記憶している暗証番号1を,発信端末のプッシュボタン等を利用して入力する態様も開示されている。
( )2 次に,原告は,本件特許発明1につき,コンピュータセンターなどにあるコンピュータによって,直接個人確認を行うので,偽造,改竄,不正利用などの犯罪に対し,安全性を確保することができると主張する。しかし,偽造,改竄,不正利用などの犯罪に対し,安全性を確保することができるのは,コンピュータが携帯通信機を呼び出すからではなく,本人しか知り得ない暗証コードを利用することの効果である。携帯通信機を呼び出したのみでは,その所持者が本人であるかどうかまで確認することはできないから,コンピュータから携帯通信機を呼び出すか,端末機から呼び出すかによって,安全性に関する効果に格別の相違はない。そして,暗証コードを利用することの効果は,同様に暗証コードを利用する引用発明1や引用例2記載の発明においても奏するものである。
( )3 原告は,さらに,本件特許発明1は,携帯通信機に決済機能をもたせることができると主張するが,引用発明1や引用例2記載の発明においても同様の機能を持たせることは可能である。
5 取消事由5(無効理由2に係る一致点の認定の誤り)に対し
原告は,本件特許発明1の「呼び出し番号」は,原告が独自に考えた新規な番号であって,PH番号ではないから,引用発明5の「PH番号」が本件特許発明1の「呼び出し番号」に相当することを前提とする,審決の無効理由2に係る本件特許発明1と引用発明5との一致点の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,上記1の( )で述べたと同じ理由により 「呼び出し番号」から,1 ,PH番号,すなわちパーソナルハンディホンの電話番号を排除する理由はなく,原告の上記主張は失当である。
6 取消事由6(無効理由2に係る相違点1,2についての判断の誤り)に対し原告は,本件特許発明1は,顧客が個人的に所有する携帯通信機とコンピュータの間で,直接的に個人確認を行うものであるのに対し,引用発明5においては,サービスシステムから銀行システムに対し,PH番号とパスワードが送信されて,個人確認がされており,パーソナルハンディホン(PH)と,銀行システムとの間において,直接的に個人確認のための情報交換が行われていないことを理由として,本件特許発明1と引用発明5とは,根本的に技術思想が異なっており,引用発明5の技術から,相違点1,2に係る本件特許発明1の構成を想到することは困難であって,審決の無効理由2に係る相違点1,2についての判断は誤りであると主張する。
しかしながら,引用発明5においては,サービスシステム(端末機)も銀行システム(コンピュータ)も認証を行う側に属する装置であって,通信回線によって接続されているところ,引用発明5において重要なのは,正当な携帯通信装置であるか否かを認証側が確認するために,該携帯通信装置の呼び出し番号によって正当な携帯通信装置を呼び出すということであり,サービスシステムから携帯通信装置を呼び出すか,銀行システムから呼び出すかは,重要ではなく,単なる設計事項である。したがって,原告の上記主張は失当であり,審決の相違点1,2についての判断に誤りはない。
7 取消事由7(無効理由2に係る顕著な作用効果の看過)に対し
原告は,審決の無効理由2が,本件特許発明1に係る顕著な作用効果を看過したと主張するが,この主張が失当であることは,無効理由1について上記4で述べたと同様である。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(無効理由1に係る一致点の認定の誤り)について
( )1 原告は,本件特許発明1において,携帯通信機と端末機とは,電話回線によって通信状態となっているから,仮に 「呼び出し番号」が電話番号であるとす,ると,コンピュータは 「呼び出し番号」によって携帯通信機を呼び出すことがで,きなくなってしまうとして 「 呼び出し番号』を電話番号と解釈することに何の支,『障もない 」とした審決の無効理由1に係る認定が誤りであり,これを前提とした。本件特許発明1と引用発明1との一致点の認定も誤りであると主張する。
しかるところ 「呼び出し番号」の具体的内容については,本件特許発明1の要,旨が 自己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携帯通信機「 」と規定するほかは,本件明細書の発明の詳細な説明にも,これを説明した記載はないし,また,本件特許発明1の要旨の「前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出され」との規定に係る,呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係 「前記端,末機から前記コンピュータに前記呼び出し番号が送信され」との規定に係る,呼び出し番号の送信のための端末機とコンピュータとの接続関係 「前記呼び出し番号,によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され」との規定に係る,コンピュータと携帯通信機との接続関係等に関する,上記各発明の要旨の規定や,発明の詳細な説明の記載を見ても 「呼び出し番号」の具体的内容に直接触れたもの,は見当たらない。しかしながら,上記「自己を呼び出すための呼び出し番号を記憶した記憶手段を有する携帯通信機」との規定中の「自己」が,携帯通信機の所持者ではなく,携帯通信機そのものを意味することは,上記規定中に 「自己」に当た,り得る語句としては「携帯通信機」しかなく,日本語の用法としては「自己」が「携帯通信機」を指すものと解するのが自然であること,本件特許発明1の要旨の「前記呼び出し番号によって前記コンピュータから前記携帯通信機が呼び出され」との規定と符合すること,本件明細書の発明の詳細な説明中に「携帯通信機10には,記憶手段としてのメモリなどが内蔵され,このメモリに携帯通信機10を呼び出すための呼び出し番号が記憶される。」(段落【0011】)との記載があることに照らして,明らかというべきところ 「携帯通信機」が携帯電話を含むことは,本件明細,書の発明の詳細な説明中に「携帯電話などの携帯通信機10 (段落【」 0011】)と記載されているとおりであるから,結局,この「呼び出し番号」には,携帯電話において,その記憶手段(メモリ)に記憶された当該携帯電話を呼び出すための番号が含まれることになるが,これは,当該携帯電話の電話番号を強く想起させるものである。
原告は,上記のとおり,本件特許発明1において,携帯通信機と端末機とは,電話回線によって通信状態となっているから,仮に 「呼び出し番号」が電話番号で,あるとすると,コンピュータは 「呼び出し番号」によって携帯通信機を呼び出す,ことができなくなってしまうと主張するところ,この主張における「携帯通信機と端末機とは,電話回線によって通信状態となっている」とは,本件特許発明1の要旨の「前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出され」との規定に係る,呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係(接続態様)が,電話回線による接続であるという趣旨である。しかしながら,本件特許発明1の要旨には,当該接続の態様を特定した規定はなく,また,発明の詳細な説明には 「ある店舗で買い物をしたと,き,携帯通信機10と店舗の端末機12とが接続される。接続の方法としては,たとえば,携帯通信機10を保持するためのホルダーを用い,このホルダーに携帯通信機10をセットすることにより,携帯通信機に形成された接続用端子とホルダー内に形成された接続用端子とが接続されるようにすればよい。そして,ホルダーが端末機12に接続され,ホルダーを介して,携帯通信機10と端末機12とが接続される。」(段落【0014】),「携帯通信機10と端末機12とが接続されると,端末機12によって携帯通信機10のメモリーに記憶された呼び出し番号が読み出される。」(段落【0015】)との記載があるが,端末機と携帯通信機との接続関係に,電話回線を利用することについては,記載も示唆もない。そうすると,呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係について,電話回線を利用した態様が排除されるとまではいえないとしても,上記発明の詳細な説明に記載されたホルダーを用いるような,電話回線を利用しない手段が含まれていることは明らかであるから 「前記端末機の前記読出手段によって前記携帯通信機の前記記憶手段,に記憶された前記呼び出し番号が読み出され」るとの要件が,携帯電話の電話番号が「呼び出し番号」に相当することを阻害するものではない。原告は,呼び出し番号を読み出す手段として,電話番号により回線接続をする手段では行わないとする限定はなく,また,本件明細書には,ホルダーと接続して行うことのみに限定する記載もないと主張するところ,そのこと自体はそのとおりであるとしても,本件特許発明1の態様中に,呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係について,電話回線を利用しない手段が含まれている以上,電話番号が「呼び出し番号」に相当することを妨げるものではないことに変わりはない。また,原告は 「呼び出し番号」は,コンピュータと携帯通信機の両方に記憶されている番号,であって,非公開の番号でもあると主張するが 「呼び出し番号」がコンピュータ,と携帯通信機の両方に記憶されている番号であることが,電話番号が「呼び出し番号」に相当することを妨げるものでないことは明らかである。のみならず 「呼び,出し番号」が非公開の番号であるとの点は,原告主張に係る発明の詳細な説明の段落【0022】及び段落【0023】を含め,本件明細書及び図面に記載も示唆もないから,この見地からも,明細書及び図面の記載に基づかない主張として,失当である。
また 呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係について, ,電話回線を利用する態様を想定したとしても,本件特許発明1の要旨に照らすと,本件特許発明1は,端末機の読出手段によって携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号が読み出された後,端末機からコンピュータに呼び出し番号が送信され,その呼び出し番号によってコンピュータから携帯通信機が呼び出されるものと認められるが,端末機の読出手段によって携帯通信機から呼び出し番号が読み出された後,コンピュータから携帯通信機が呼び出されるまでの間,端末機と携帯通信機との間でデータをやり取りすることについて,発明の要旨が規定していないことはもとより,本件明細書又は図面に,その旨の記載や示唆があるわけでもない。そうであれば,端末機の読出手段によって携帯通信機から呼び出し番号が読み出された後は,端末機と携帯通信機との電話回線による接続関係を維持しておく理由はないから,接続を絶つことは当然に考えられ,発明の要旨にこれを妨げるような規定はなく,また,本件明細書又は図面にも,これを妨げるような記載又は示唆はない。そうすると,呼び出し番号の読出しのための端末機と携帯通信機との接続関係について,電話回線を利用する態様を想定したとしても 「前記端末機の前記読出手段,によって前記携帯通信機の前記記憶手段に記憶された前記呼び出し番号が読み出され」るとの要件が,携帯電話の電話番号が「呼び出し番号」に相当することを阻害するものではない。
したがって,審決が「 呼び出し番号』を電話番号と解釈することに何の支障も『ない 」と認定したこと,及び,このことを前提として本件特許発明1と引用発明。1との一致点の認定をした点に,何ら誤りはない。
( )2 原告は,引用発明1の「読取手段」は電話番号を入力手段で入力するが,本件特許発明1の「読出手段」は,端末機12の読出手段によって携帯通信機10の記憶手段に記憶された呼び出し番号を読み出すものであるから,審決が,本件特許発明1の「読出手段」及び引用発明1の「読取手段」を 「携帯通信機の記憶手,段に記憶した呼び出し番号を端末機に入力する点で,『入力手段』といえる。」とし,このことを前提として,本件特許発明1と引用発明1との一致点の認定をしたことが,単純に「入力手段」と抽象化すべきではないものを抽象化する誤りを犯したものと主張する。
しかるところ,引用例1には 「各携帯電話1a,1b,1cは,自己の電話番,号(呼出し番号)やその他の情報を内蔵メモリ(図示せず)に記憶しており,それに備えられるボタン等を押すことにより これらの情報を無線で外部に送信したり, ,ディスプレイ(図示せず)上に表示させたり,スピーカ(図示せず)から音声として発音させたりする機能を有している。」(段落【0011】),「各取引物引渡し装置には,取付け台21,入力キー22,カメラ23,マイク24が備えられている。取付け台21は,顧客が持参した携帯電話を取り付けるための台である。」(段落【0016】),「入力キー22は,後述するキーワードや暗証番号を顧客が入力する際に使用される。また,必要に応じ,顧客の所有する携帯電話の電話番号も入力される。カメラ23は,上記取付け台21に取り付けられる携帯電話のディスプレイに表示される文字,数字,記号等を撮し取るために使用される。一方,マイク24は,上記取付け台21に取り付けられる携帯電話のスピーカから発音される音声を聴き取るために使用される。」(段落【0017】),「各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,顧客の持参する携帯電話の認証を行うため,取り付けられた携帯電話から上記カメラ23やマイク24を介してその電話番号を入力する (段落【」 0020】)との各記載があり,これらの記載によれば,引用発明1の取引物引渡し装置は,携帯電話の記憶手段に記憶された電話番号(呼出し番号)を手動でディスプレイ上に表示させた後,これを読み取る読取手段を有するものであることが認められる。そうすると,本件特許発明1と,引用発明1とは,ともに端末機が,携帯通信機の記憶手段に記憶された呼び出し番号を取り出して入力データとするものであり,その取り出すための手段が,本件特許発明1では「読出手段」であり,引用発明1では「読取手段」ではあるものの,いずれも端末機が,入力データとするため,携帯通信機からその呼び出し番号を取り出すという目的及び作用において相違はないから,これらを「入力手段」と捉えたとしても,抽象化すべきではないものを抽象化したということはできない。
したがって,審決の上記説示,及びこれを前提として,本件特許発明1と引用発明1との一致点の認定をしたことに誤りはない。
2 取消事由2(無効理由1に係る相違点2についての判断の誤り)について
( )1 原告は,審決の無効理由1に係る相違点2の判断に対し,引用発明1には,情報処理装置に呼び出し番号を通知することや,当該通知により,情報処理装置に,携帯電話に連絡して本人の確認をさせることなどを,取引物引渡し装置にさせる技術思想は全く存在せず,また,引用例2に記載された発明は,本件特許発明1や引用発明1とは,技術分野が全く異なり,技術的課題も異なっているのみならず,発信端末から呼び出し番号又は電話番号の通知を受けた情報センタが,その呼び出し番号又は電話番号に基づいて,別の発信端末を呼び出し,暗証コードを送信させるという技術思想は,開示も示唆もされていないから,引用発明2-1を引用発明1に組み合わせることが容易になし得たとすることはできないと主張する。
しかるところ,引用例1には 「各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,通信,回線を通じて上記情報処理装置3と接続されており,必要に応じて情報処理装置3のメモリ31に登録されているデータ(顧客の所有する携帯電話の電話番号,暗証番号,取引情報等)にアクセスできるようになっている。」(段落【0019】),「各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,顧客の持参する携帯電話の認証を行うため,取り付けられた携帯電話から上記カメラ23やマイク24を介してその電話番号を入力するとともに,この電話番号に基づいて上記メモリ31に登録されている各顧客の電話番号を検索し,一致するものが存在するか否かを調べる。」(段落【0020】),「また,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,いま取り付けらている携帯電話が本当に上記電話番号に相当するものなのかどうかをさらに調べる。すなわち,各取引物引渡し装置4a,4b,4cは,当該電話番号に基づいて対応する携帯電話を呼出し,続いてその携帯電話にキーワードを送信することによって,顧客の持参する携帯電話が当該キーワードを受信するかどうかを確認する。」(段落【0021】),「このとき取り付けられている携帯電話が上記電話番号に相当するものであれば,その携帯電話のディスプレイ上に上記キーワードが表示されるか,又は,そのキーワードが音声として発音されることになる。そして,送信したキーワードと同じものが上記カメラ23又はマイク24を介して検出された場合には,正真の携帯電話であると判断する。」(段落【0022】)との各記載があり,これらの記載によれば,引用発明1においても,取引物引渡し装置(端末機)が,携帯電話からその電話番号を入力した後,情報処理装置3のメモリ31に登録されている電話番号と照合するためであるとはいえ,入力した電話番号を情報処理装置に送付していることが認められる。もっとも,引用発明1において,入力した電話番号に基づき,携帯電話を呼び出すのは,情報処理装置(コンピュータ)ではなく,取引物引渡し装置それ自身であることは,原告の主張するとおりである。しかしながら,携帯電話を呼び出す目的が,顧客個人が所有する携帯電話(携帯通信機)を用いて,携帯電話の認証を行い,ひいて個人確認をすることにある点では,本件特許発明1と変わらず,その際に重要なのは,電話番号(呼び出し番号)に基づいて対応する携帯電話(携帯通信機)を呼び出すことであって,その呼び出しを取引物引渡し装置(端末機)が行うか,情報処理装置(コンピュータ)が行うかは,単なる設計事項の域を越えるものではない。そうすると,引用発明1においても,採用されなかったとはいえ,情報処理装置(コンピュータ)が,携帯電話を呼び出して認証をする技術思想が排除されているということはできない。
他方,引用例2には 「発信端末11が情報センタ(または特定着信者)12へ,の発信を行うと,交換機15は発信者ID取得蓄積装置13に接続し,発信端末11の発信者IDを取得蓄積すると共に,暗証番号発生装置16に暗証番号発生を依頼し,暗証番号を受け取る。そして,受け取った暗証番号を発信者IDと関連づけて蓄積する。その後,トーキートランク14に暗証番号を通知し,発信端末11との接続をトーキートランク14に移す。トーキートランク14では,発信端末11と接続されると発信者ID取得蓄積装置13から受け取った暗証番号をトーキーに変換し,発信端末11に通知する。」(段落【0008】),「その後,交換機15は,発信端末11を切断状態にした後,情報センタ12へ発信し,発信者ID取得蓄積装置13に蓄積された,発信端末11の発信者IDと,発信端末11へ通知した暗証番号を通知する。暗証番号をトーキーで受け取った発信端末11では,発信者が自分で記憶するか,もしくは端末内に記憶させておく。」(段落【0009】),「次に ・・,・情報センタ12がコールバックする時は,情報センタ12から,交換機15が通知した発信者IDをもとにコールバック要求した発信端末11を着信端末として呼び出す処理を行う。呼び出された発信端末11は受話器を取る等の動作で通信状態になる。通信状態になると,情報センタ12またはコールバック要求元の発信端末11は,それぞれ交換機15から通知された暗証番号を用いて相手端末,送受信情報を確認,選択した後,コールバックの処理を行う。」(段落【0010】),「例えば,情報センタ12から回線接続後,情報センタ12がトーキーにて暗証番号を着信者に通知し,着信者が,それを聞いた後,対応する情報を選択し送出する。また例えば,情報センタ12から回線接続後,情報センタ12が暗証番号を着信者に要求し,着信者にPB等で暗証番号を入力させることで認証し対応する情報を選択して送出する。この暗証番号による認証は,情報センタ12側が行うようにしてもよく,コールバック要求をした端末側が行うようにしてもよい。サービスの内容に応じて決めることができる。」(段落【0011】)との各記載があり,これらの記載によれば,引用例2には,発信端末11の発信者ID及び暗証番号を受け取った情報センタ12が,その発信者IDをもとに発信端末11を呼び出し,その呼び出しにより情報センタ12と発信端末11とが通信状態になると,発信端末11から暗証番号が情報センタ12に送信され,情報センタ12において受信した暗証番号が認証されるシステムが記載されており,特に 「暗証番号をトーキーで受け取った発信端末1,1では,発信者が自分で記憶する (段落【」 0009】),「着信者にPB等で暗証番号を入力させることで認証し (段落【」 0011】)との各記載に照らして,コールバック受信者が,自分自身で記憶している暗証番号をプッシュボタン等により,発信端末12から入力することにより,コールバック受信者の本人確認をすることが示唆されているものと認めることができる。
そうすると,引用発明1及び引用例2に記載された発明とも,いずれも通信手段を用いて個人認証(確認)を可能にしたものとして,技術分野が共通するものということができる。
そして,そうであれば,上記のとおり,情報処理装置(コンピュータ)が,携帯電話を呼び出して認証をする技術思想が排除されているとはいえない引用発明1に,引用例2に記載された「発信端末から情報センタに発信者IDが送信され,発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される,コールバック方法及び交換システム (引用発明2-1)を適用することにつき,当業者にとって格別の」困難性があるとはいえないから,上記原告の主張を採用することはできない。
( )2 また,原告は,引用発明2-1の「発信者ID」は,単に発信者を識別するだけの識別符号にすぎず,審決の「発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される」とする引用発明2-1の認定は誤りであるから 「発信者ID」,が「呼び出し番号」に相当するということはできないと主張する。
しかしながら,上記( )のとおり,引用例2に「次に ・・・情報センタ12がコ1 ,ールバックする時は,情報センタ12から,交換機15が通知した発信者IDをもとにコールバック要求した発信端末11を着信端末として呼び出す処理を行う。呼び出された発信端末11は受話器を取る等の動作で通信状態になる。」(段落【0010】)との記載があり,この記載によれば,コールバック時,情報センタ12は,発信者IDをもとに発信端末11を着信端末として呼び出す処理を行い,発信端末11は受話器を取る動作で通信状態になることが認められるのであるから,発信者IDには,発信端末の電話番号が含まれるか,そうでないとしても,発信者IDからそれに対応する発信端末の電話番号が導かれて使用されることが認められる。そうすると,引用発明2-1の認定に当たって,審決が「発信者IDによって情報センタから発信端末が呼び出される」と認定したことに誤りはなく 「発信者ID」が「呼,び出し番号」に相当するとして,このことを前提に,無効理由1に係る相違点2についての判断をした点についても誤りはない。
3 取消事由3(無効理由1に係る相違点3についての判断の誤り)について
原告は,審決の無効理由1に係る相違点3についての判断に対し,引用発明2-1について述べたと同様,引用発明2-2を引用発明1と組み合わせることは容易でないと主張するが,当該主張は,原告の主張の要点2(無効理由に係る相違点2についての判断の誤り)の( )と同様の根拠,すなわち,引用発明1に引用例2に1記載された発明(引用発明2-2)を組み合わせることが困難であるという根拠によるものであるところ,上記2の( )で述べたと同じ理由により,当業者が,引用1発明2-2を引用発明1と組み合わせることに格別の困難性があったとはいえない。
4 取消事由4(無効理由1に係る顕著な作用効果の看過)について
原告は,審決が,本件特許発明1に係る顕著な作用効果を看過して,本件特許発明1が,引用発明1,引用発明2-1,引用発明2-2及び周知技術に基づいて容易に想到し得ると判断したものであるから,その判断は誤りであると主張するが,以下のとおり,原告の主張する作用効果が格別なものであると認めることはできないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,失当である。
( )1 原告は,本件特許発明1では,携帯通信機に入力された暗証コードが,コンピュータにおいてそのコンピュータに記録された暗証コードと照合されるため,携帯通信機に暗証コードを記録しておく必要がなく,たとえ携帯通信機が盗まれたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれはないと主張し,また,コンピュータセンターなどにあるコンピュータによって,直接個人確認を行うので,偽造,改竄,不正利用などの犯罪に対し,安全性を確保することができ,しかも,端末機が数多く設置されたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれはないとも,主張する。
しかしながら,暗証コード(暗証番号)がコンピュータ(情報処理装置のメモリ)に記憶され,携帯通信機の所有者が入力した暗証コードと照合されるので,携帯通信機に暗証コードを記録しておく必要がないことは,引用発明1においても同様であり,したがって,携帯通信機が盗まれたとしても,そこから暗証コードを知られるおそれがないとの効果は,引用発明1においても奏するものである。もっとも,引用発明1においては,暗証コードは,端末機(取引物引渡し装置)の入力キーから入力され,端末機において,コンピュータに記憶されていた暗証コードと照合されるものであるが,このことにより,上記効果を奏する点に影響が及ぶものではない。
また 「本件特許発明1では 『携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信, 、することにより前記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合され、前記コンピュータで前記暗証コードが照合された結果が端末機に送信される』のに対して、引用発明1では、端末機の入力キーから暗証コードを入力することにより前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合される点」は,審決が相違点3として認定したところであり,この相違点3について,引用例2に「発信端末から暗証番号を情報センタに送信することにより,情報センタにおいて,発信者IDと関連付けて記憶された暗証番号と照合するコールバック方法及び交換システム (引用発明2-2)が記載されている」ことを認定した上,引用発明1において 「入力キーから暗証コードを端末機に入,力し,前記端末機において呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合することに代えて,携帯通信機から暗証コードをコンピュータに送信し,前記コンピュータにおいて呼び出し番号と関連付けて記憶された暗証コードと照合するようにして,上記相違点3に係る本件特許発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである 」とした審決の判断に,原告主張の誤り(引用発明2。-2を引用発明1と組み合わせることの困難性を否定した誤り)がないことは,上記2,3のとおりである。そして,原告が主張する上記効果は,携帯通信機に暗証コードを記録しておく必要がないことにより奏するものを含め,引用発明1が相違点3に係る本件特許発明1の構成を採用することに伴って,当然に予測し得るものである。したがって,原告の主張に係る上記各効果は,これを格別顕著なものということはできない。
( )2 さらに,原告は,本件特許発明1が,呼び出し番号として決済のための口座番号を充てるなどして,携帯通信機に決済機能をもたせることや,クレジットカード,その他のカード機能を一つの携帯通信機にもたせることができ,各種カード機能の整理統合を図って,現金やカードを所持していなくとも,携帯通信機から暗証コードを送信して決済ができるし,決済に必要な情報をいつでもどこからでも入手することができると主張する。
しかしながら,まず,決済のための口座の口座番号を携帯通信機の呼び出し番号とすることは,本件明細書又は図面に記載又は示唆がないから,明細書又は図面の記載に基づかないものであって,失当である。また,原告が主張するその余の効果は,本件特許発明2又は本件特許発明3の構成を採用することにより奏することがあるとしても 本件特許発明1の構成自体によって直ちに奏するものとは認め難い, 。そうすると,結局,原告主張の点は,本件特許発明1の顕著な作用効果ということはできない。
5 結論
以上によれば,無効理由2について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,棄却されるべきである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官塚 原 朋 一
裁判官石 原 直 樹
裁判官高 野 輝 久