判例
民事訴訟法民事訴訟法判例百選第6版A10
将来の法律関係の確認
全文
主 文
1 被告は,原告に対し,金23万4559円及びこれに対する平成18年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを6分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,金132万8250円及びこれに対する平成18年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,被告の開設する歯科医院において歯の補綴治療を受けた原告が,被告に対し,①原告の要望どおりの形状の補綴物を製作する旨の合意があったにもかかわらず,その債務の不履行(不完全履行)があったと主張して,診療契約の解除による原状回復請求権に基づき,既払いの補綴治療費の返還を求め,また,②診療契約の締結に際し,原告の要望どおりの形状の補綴物の製作は不可能であることなどを説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったと主張して,債務不履行又は不法行為に基づき,上記補綴治療費相当額の損害の賠償を求めている事案である(附帯請求は,訴状送達日の翌日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払請求である。)。
なお,以下では,診療契約上の義務(債務)ないし診療上の注意義務(不法行為法上の過失の前提となる注意義務)を併せて「義務」という。また,歯科医学も単に「医学」という。
1 前提事実(証拠原因により認定した事実については,括弧書きで当該証拠原因を掲記する。その余の事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 被告は,東京都葛飾区内において「●●●歯科医院」という名称の歯科医院(以下「被告医院」という。)を開設している医療法人である。
歯科医師であるB(以下「B医師」という。)は,被告の理事長であり,被告医院の院長も務めている。
イ 原告(昭和33年生の女性)は,平成17年6月4日から平成18年3月4日まで被告医院においてB医師による歯の補綴治療を受けた者である(以下の日付のうち年の記載のないものは,6月から12月までは平成17年であり,1月から3月までは平成18年である。)。
(2) 診療契約の締結及び原告の要望事項
ア 原告は,6月4日,初めて被告医院を受診し,B医師と話し合った上,被告との間で,計15本の歯(右上2番から7番まで,左上4番から7番まで(5番から7番まではブリッジ),右下5番から7番まで,左下6番と7番)のメタルボンド冠(セラミック冠)での補綴の治療(以下「本件補綴治療」という。)を目的とする診療契約(以下「本件診療契約」という )を締結した。。
イ 原告は,上記話合いの際,B医師に対し,下記のとおり記載した書面(以下「本件要望書」という。)を手渡して,下記①から⑨までのとおりの要望をした。
記「歯を付けて頂く上での要望を書き出しました。不可能な点が有りましたら,事前に教えて下さい。① 作って頂きたい歯は,左上4本(ブリッジの3本とその右隣の1本),左下2本,右上6本,右下3本の計15本です。② 基礎の金属部分,表面の白い部分,共に一番丈夫で長持ちする材料で作って下さい。③ ブリッジにする3本以外は,隣り合った歯でも連結させずに,1本ずつ個別の歯にして下さい。④ 表側だけでなく,裏側も歯茎の所まで白くし,金属部分が一切見えない歯にして下さい。⑤ 上下,左右,各2本ずつの奥歯は,凹凸をきつくしないで下さい。⑥ 上下,左右共に,作る全ての歯の歯型を一度に取り,出来上がったら一度に付けて下さい。⑦ 出来上がったら,付ける前に見せて下さい。⑧ 歯は,仮留めの状態で,数日様子を見させて下さい。⑨ 仮留め中は良くても,万一確り付けた後で不具合が有った時は,速やかに壊して下さい。
この他に3点ほど,口頭にてお願いしたい所が有りますが,よろしくお願い申し上げます。」
ウ また,原告は,上記話合いの際に(原告の主張)か,その後の診療の過程で(被告の主張)かはともかくとして,B医師に対し,口頭で,①左上4番の被覆冠の形状,②右上2番と3番の被覆冠の形状,③右下5番の被覆冠の形状についての要望をした(以下,この要望事項を「本件口頭要望事項」という。)。
(3) 原告は,7月9日,被告に対し,本件補綴治療代として132万8250円を前払いした(以下,この治療代を「本件補綴治療費」という。)。
(4) 本件補綴治療については,1月7日まで,レジン(プラスチック)製の暫間被覆冠(仮歯。これを撮影した写真が甲第9号証の2,第10号証の1ないし5。以下「本件レジン製仮歯」という。)の調整が行われ,その後,2月17日までに,金銀パラジウム合金(金パラ)製金属冠(最終補綴物ではないもの。これを撮影した写真が甲第6号証の1ないし5,第9号証の1。以下「本件金属冠」という。)が製作された。
なお,原告は,1月21日,被告に対し,本件金属冠の製作費用として15万7500円を支払った。
(5) 原告は,2月18日,被告に対し,本件診療契約を解除する旨の意思表示をした。
(6) 被告は,2月28日,原告に対し 「患者さんの都合による中止の場合,,
一旦受領した治療費は返還しない取り決めになっています。」などと記載して27万円を返還する旨を記載した「治療費返還のおしらせ」と題する書面(甲第2号証)を送付した。
2 原告の主張
(1) 本件診療契約の解除による原状回復請求
ア 本件診療契約における合意及び被告の債務
本件診療契約締結の際,原告が,B医師に対し,本件要望書による要望をしたほか,口頭で,被覆冠の形状につき,①左上4番について,頬側咬頭を大きめにして,口蓋側咬頭を小さくほとんど咬頭のないような形状にし,中心溝を少し舌側に移動させること,②右上3番の幅を少し狭くし,右上2番については,他院で製作されて装着されていたセラミック製のものよりも幅を少し広くすること,③右下5番は左下5番と同じ形状にすることも要望したところ,B医師は,本件要望書に「不可能な点が有りましたら,事前に教えて下さい。」との記載があったにもかかわらず,本件要望書の④については無理であると述べただけで,その余については「希望に沿えるよう努める。」と述べて,上記要望(本件要望書の④は除く。)を承諾した。
上記のとおりであって,本件診療契約においては,上記要望(本件要望書の④は除く )どおりの補綴物を製作する旨が合意された。。
したがって,被告は,原告に対し,上記要望(本件要望書の④は除く。)どおりの補綴物を製作すべき債務を負っていたというべきである。
イ 被告の債務不履行
しかるに,本件レジン製仮歯は,その形状が上記要望とは全く異なっていた。
そこで,原告は,B医師に対し,「仮歯では材料の強度等の問題で希望の形状のものが作れないのであれば,まず,色は歯と同じ白色でなくてよいので希望の形状のものを作ることのできる廉価な材料で補綴物を製作してほしい。その上で,希望の形状の補綴物を製作してもらえると確信が持てたならば,改めて,当初依頼した補綴物の製作を依頼し,その確信が持てなければ,被告医院には補綴物の製作を依頼しない。」と述べて,まず廉価な材料による補綴物を先行して製作することを依頼した(被告主張の如く試作物の製作を依頼したのではない。)。
この依頼に応じて製作されたのが本件金属冠であるが,本件金属冠も,次の①から③までのとおり,その形状が上記要望とは全く異なっていた。なお,本件レジン製仮歯は歯と歯の間に隙間が大きく空いていたため,上記の廉価な材料による補綴物の製作を依頼する際,隙間が空かないようにしてほしいと依頼したが,本件金属冠も隙間が大きく空いたままであった。① 奥歯について,凹凸が非常にきつく,噛んだとき,上下の歯の一部分が当たるだけ(下の左右の奥歯の表側の山が上の歯に当たるだけ)であるため,食べ物が切れるだけで,食べ物を噛みつぶすということができない(廉価な材料による補綴物の製作を依頼した際,本件レジン製仮歯の問題点を指摘し,上の左右の奥歯の裏側の山も下の歯に一緒に当たるようにして食べ物が歯から逃げずに噛みつぶせるようにしてほしいと依頼した。)。② 左上4番は,溝が真ん中にあって,表側と裏側に同じ大きさの山がある(ただし,裏側の山は平らに削り取られた。)。③ 右上2番は,先が尖っていて,幅が狭い。
ウ 上記ア,イのとおりであるから,原告は,被告に対し,上記1(5)の解除による原状回復請求権に基づいて,既払いの本件補綴治療費の返還を求めることができる。
(2) 説明義務違反(債務不履行ないし不法行為)に基づく損害賠償請求
ア 説明義務違反
(ア) 初診時(6月4日),B医師は,原告から,「不可能な点が有りましたら,事前に教えて下さい。」と記載された本件要望書を手渡されるなどして,上記要望をされたところ,その要望には,医学的見地に照らして相当でないか,その実現が極めて困難であるものが含まれていると判断したというのであるから,B医師ないし被告は,原告に対し,その旨を具体的に説明すべき義務を負っていた。
しかるに,B医師(ないし被告)は,原告に対し,本件要望書の④については無理であると説明したものの,その余の点については「希望に沿えるよう努める。」との言い回しに終始した(このように言われれば,原告の要望どおりの補綴物が製作されるものと期待する。)。
(イ) 被告医院においては,患者の都合による治療中止の場合には,一旦受領した治療費を返還しない取り決めになっていたのであるから,B医師ないし被告は,初診時(6月4日),原告に対し,上記取り決めについて説明すべき義務を負っていた。
しかるに,B医師(ないし被告)は,原告に対し,上記説明を全くしなかった。
(ウ) B医師ないし被告は,初診時(6月4日),原告に対し,高価な材料で補綴物を製作する前にまず廉価な材料で補綴物を製作してみることを勧めるべき義務を負っていた。
しかるに,B医師(ないし被告)は,原告に対し,上記のような勧めないし説明をしなかった。
イ 上記各説明義務違反による損害
(ア) 上記ア(ア)の説明義務が尽くされていれば,原告は,被告に対し,本件補綴治療を依頼することはなかった(被告との間で本件診療契約を締結することはなかった。)のであり,したがってまた,本件補綴治療費を支払う必要もなかった。
また,上記アの(イ)又は(ウ)の説明義務が尽くされていれば,原告は,被告に対し,いきなり高価な材料での補綴物の製作を依頼することはなく,その前に廉価な材料での補綴物の製作を依頼していたはずであり,そうしていれば,その補綴物が原告の要望を満たすものでないことが分かって,それ以上に補綴物の製作を依頼することはなかった(本件補綴治療費を支払う必要はなかった。)。
(イ) したがって,上記アの(ア),(イ)又は(ウ)の説明義務違反があったことにより,原告は,既払いの本件補綴治療費相当額の損害を受けたと
いえる。
ウ 上記ア,イのとおりであるから,原告は,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づいて,132万8250円の損害の賠償を求めることができる。
3 被告の主張
(1) 被告医院における原告の診療経過
被告医院における原告の診療経過は,別紙診療経過一覧表に記載のとおりである(ただし,11月19日の「検査・処置」欄の「右上7~5番」を「右下7~5番」に,1月21日の「診療経過」欄の「右下4番を右上4番と同じ」を「右下4番を左下4番と同じ」にそれぞれ訂正する。)。これを敷衍すると,以下のとおりである。
ア 初診時(6月4日),B医師は,原告の要望に対し,「医学的に見て困難なものがあるので,できることとできないことがある。技工所と相談しながら,できる限り希望に沿えるよう努める。」と説明し,原告の了解を得た。
なお,本件口頭要望は,初診時ではなく,後の診療の過程で出てきたものである。
イ B医師が当初考えた治療の手順は,メタルフレーム(メタルボンド冠を作るための土台になる金冠。この金冠の上にセラミックを盛り上げて白い歯にする。)の上にホワイトワックスを盛ったものを試適して,原告がどのような形状のものを希望しているのかを客観的に把握し,その希望に従ってホワイトワックスの形状を調整した上,その原告の希望に沿ったホワイトワックスの形状どおりに最終補綴物を製作するという通常のものであった。
ところが,8月6日,B医師が,製作されたメタルフレームを試適しようとしたところ,原告は,「最初からメタルでは作ってほしくない。納得してからメタルボンド冠を作ってほしい。」と言って,その試適を拒否した。そこで,B医師は,まずレジン製仮歯を製作することとし,歯科技工所にその発注をした。
ウ その後の1月7日,B医師は,それまで調整を経ていた本件レジン製仮歯を仮着したところ,原告が咬合について納得したことから,咬合を採得した。しかし,原告から,レジン製の仮歯では形状がよくわからないので金属製の仮歯を製作してほしいと要求されたため,金銀パラジウム合金 金(パラ)製の金属冠(仮歯)を製作することになり,歯科技工所にその発注をした。
こうして2月17日までに製作された金属冠(仮歯)が本件金属冠である。
したがって,本件金属冠は,原告主張のような「廉価な材料による補綴物」ではなく,原告が形状を確認することができるようにするための試作物(仮歯)である。
エ 2月17日,B医師は,本件金属冠を仮着した。B医師としては,形状について原告から更なる要望があれば,医学的に相当な範囲で調整し,その上で最終補綴物を製作するつもりであった。
ところが,同月18日,原告は,「この形状は要望どおりになっていない。これ以上通院しても無駄である。」などと述べて,一方的に治療を受けるのを中止した。
(2) 本件診療契約における合意及び被告の債務
上記(1)アのとおりであり,かつ,歯科医師としては医学的に相当でない治療を行ってはならないのであるから,本件診療契約においては,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望に沿えるよう努めて治療する(換言すれば,原告の要望に沿えないこともある。)旨が合意されたにすぎず,原告主張の如く原告の要望どおりの補綴物を製作する旨が合意されたということはない(原告も,その本人尋問において,「技工士さんと相談しながらするけれども,一応希望に沿うようには努める,というふうなお話でした。」と供述している。)。
なお,形状に関しては,果たして原告がどの程度のものを要望しているのか,言葉だけでは,あまりにも主観的,抽象的で,正確に把握することができないため,被告としては,事前に原告の要望が実現可能か否かを判断することができず,できる限り原告の要望に沿えるように努めるということで原告の了解を得て治療を開始するしか方法がなかった。
したがって,本件診療契約上,被告は,原告に対し,原告の要望どおりの補綴物を製作すべき債務は負わず,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望に沿えるよう努めて治療するという債務を負っていたにすぎない。
(3) 本件診療契約の解除による原状回復請求について
ア 上記(2)のとおりであるところ,本件レジン製仮歯及び本件金属冠は,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望に沿ったものであり,原告もその咬合に納得したのである(しかも,上記(1)エのとおり,B医師としては,形状について原告から更なる要望があれば,医学的に相当な範囲で調整し,その上で最終補綴物を製作するつもりであった。)。したがって,被告に債務不履行はない。
本件金属冠の形状につき,原告がその要望と異なるものとして挙げる点について具体的にみると,次のとおりである。
① 奥歯に関して
奥歯には凸凹のあることが正常な咬合の基本であって,奥歯の咬合面が平らになると,物を噛むことができなくなり,その結果,他の部分で噛むようになって,当該部分に負荷がかかりすぎ,本件では犬歯等のセラミックが破折することが予測される。
② 左上4番に関して
原告の要望に従うと,口蓋側咬頭が下顎と咬合しなくなる。③ 右上2番と3番に関して
原告の要望に従ってセラミックを製作すると,最終補綴物に厚みが生じてしまうことから,右上3番の幅を狭くするためには歯牙を削る必要があるところ,初診前から右上3番の支台は細く形成されており,それ以上削ると破折する危険がある。④ 歯と歯の隙間について
原告の要望に従って歯冠部の根元部分まで歯と歯の隙間が狭くなるようにすると,炎症を起こし,ひいては歯周病に至るおそれがある。
イ 仮に本件レジン製仮歯及び本件金属冠が原告の要望に沿う形状のものではなかったとしても,それは,①原告が,ホワイトワックスを盛ったメタルフレームの試適を拒否して,形状に関する原告の要望を客観的に把握する機会を被告から奪い,また,②本件金属冠についても,最終補綴物ではなく,形状等について修正がなお可能な段階であったにもかかわらず,原告が,一方的に治療を受けるのを中止して,形状に関する原告の要望を更に反映させる機会を被告から奪ったことによるものであって,被告の責めに帰すことのできない事由によるものである。
ウ 原告に返還すべき金員
本件診療契約については,本件補綴治療につき最終補綴物の製作・装着のみが未履行であった時点で,原告が一方的に解除したものである。
ところで,準委任契約が受任者の責めに帰すことのできない事由により履行の途中で終了した場合には,受任者は履行の割合に応じて報酬を受けることができる。
したがって,被告が原告に返還すべき金員は,下記のとおり23万4559円の限度にとどまる。
記① 本件補綴治療費総額 132万8250円
・ 臼歯のメタルボンド冠補綴 1歯当たり8万5000円
・ 前歯のメタルボンド冠補綴 1歯当たり8万円
・ 8万5000円/歯×臼歯13歯+8万円/歯×前歯2歯+消費税6万3250円=132万8250円② 技工料 23万2050円
・ 臼歯13歯分 1万5000円/歯×13歯=19万5000円・ 前歯2歯分 1万3000円/歯×2歯=2万6000円
・ 消費税 1万1050円③ 金属代 11万1919円
・ 3300円/g×32.3g=10万6590円
・ 消費税 5329円④ 実質的な診療代金 98万4281円
①-(②+③)=98万4281円⑤ 歯科技工所に支払済みの技工料・金属料 10万9410円⑥ 最終補綴物の技工料 23万4559円
(②+③)-⑤=23万4559円
なお,原告の要求によって治療時間を引き延ばされており,治療中止の時点で実質的な診療代金(上記④)に見合った診療は既に行っていたことから,この診療代金から原告に返還すべきものはない。
(4) 説明義務違反に基づく損害賠償請求について
ア 上記2(2)アの(ア)について
初診時(6月4日),B医師は,原告に対し,本件要望書の③ないし④の医学的な問題点(⑤の奥歯の凸凹の点については,上記(3)ア①のとおりであること)を指摘するなどした上,「医学的に見て困難なものがあるので,できることとできないことがある。技工所と相談しながら,できる限り希望に沿えるよう努める。」と説明して,原告の了解を得た。形状に関しては,果たして原告がどの程度のものを要望しているのか,言葉だけでは,あまりにも主観的,抽象的で,正確に把握することができないため,B医師としては,事前に原告の要望が実現可能か否かを判断することができず,できる限り原告の要望に沿えるように努めるということで原告の了解を得て治療を開始し,その後,試適と調整を繰り返しながら徐々に原告の希望する形状を把握して,最終補綴物を製作しようと考えていた。
上記のとおりであるから,B医師は,原告に対し,必要な説明は尽くしたものというべきであり,説明義務違反はない。
イ 同(イ)について
上記(3)ウのとおりである。
ウ 同(ウ)について
初診時,原告は,「基礎の金属部分,表面の白い部分,共に一番丈夫で長持ちする材料で作って下さい。」(本件要望書の②)と要望し,当初から高価な材料での補綴物の製作を求めたのであるから,B医師が廉価な材料での補綴物の製作を勧める義務を負っていたとはいえない。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実に証拠(甲7,乙A1,2,5,原告本人,被告代表者のほか,各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,被告医院における原告の診療経過の概要は別紙診療経過一覧表(ただし,11月19日の「検査・処置」欄の「右上7~5番」を「右下7~5番」に,1月14日の「診療経過」欄の「右上2番についてはレジン製の暫間被覆冠より」を「右上2番については被告医院受診前からの被覆冠より」に,1月21日の「診療経過」欄の「右下4番を右上4番」を「右下4番を左下4番」にそれぞれ訂正する。)に記載のとおりであり,その主な点を敷衍し,又は補足すると以下のとおりであることが認められる。
(1) 原告の被告医院受診に至る経緯
原告は,複数の歯科医院を受診して歯の補綴治療を求めたが,補綴の方法や内容について独自の希望を有していたため,いずれの歯科医院でも診療不可能として断られていたところ,東京社会保険診療報酬支払基金の職員の紹介で被告医院を受診することになった。
(2) 6月4日の初診時
ア 原告は,B医師に対し,本件要望書による要望をしたほか,本件口頭要望事項(すなわち,①左上4番の被覆冠の形状,②右上2番と3番の被覆冠の形状,③右下5番の被覆冠の形状に係る要望事項)の要望もした。
イ 原告の上記要望に対し,B医師は,本件要望書の④については,技術的に困難であることなどを説明して,何とか原告を翻意させたが,その余の点については,最終的には,「歯科技工士と相談しながら,できる限り要望に沿うように努める。」旨を述べて,原告の了解を得た。その際,B医師は,補綴物の形状に関する要望(本件要望書の⑤と本件口頭要望事項)については,補綴治療を開始する前の時点では,果たして原告がどの程度のことを要望しているのかを正確に把握することができないため,できる限り要望に沿うように努めるということで原告の了解を得て治療を開始し,その後,試適と調整を繰り返しながら徐々に原告の要望する形状を把握して,最終補綴物を製作しようと考えた。
ウ B医師が考えた治療の手順は,メタルフレーム(メタルボンド冠を作るための土台になる金冠。この金冠の上にセラミックを盛り上げて白い歯にする。)の上にホワイトワックスを盛ったものを試適して,原告がどのような形状のものを要望しているのかを客観的に把握し,その要望に従ってホワイトワックスの形状を調整した上,その原告の要望に沿ったホワイトワックスの形状どおりに最終補綴物を製作するというものであった。
(3) 6月11日の診察
被告医院受診前から装着されていた暫間被覆冠を外したところ,対象の15歯すべてが前医のもとで形成(各種の補綴装置に適応する形態に患歯を削除すること)されて非常に小さくなっており,これらを支台(被せ物をするときの土台)としてそれぞれに単冠を装着しても,すぐに脱離することが容易に予想された。そこで,B医師は,本件要望書の③に関して,連結冠での補綴を勧めた。
しかし,原告は,「脱離すれば,そのときに作り直せばよい。」などと述べて,これを拒否した。
そのため,B医師は,原告の要望に従って,ブリッジで補綴する左上5ないし7番の3歯を除く12歯につき単冠で補綴する方向で治療を進めることとした。
なお,B医師は,原告に対し,補綴費用の見積金が123万9000円であることを伝えた。
(4) 6月18日の診察(甲3)
原告の支台は小さかったが形成がほぼ済んでいたため,B医師は,支台に若干の形成を施した上,暫間被覆冠を調整して仮着することとした。
また,B医師は,原告に対し,上記見積が誤っていたとして,下記のとおり正しい見積金が記載されたメモを手渡した。
記
臼歯のメタルボンド冠補綴 1歯 8万5000円(税別)
前歯のメタルボンド冠補綴 1歯 8万円(税別)
総額 132万8250円
(8万5000円/歯×臼歯13歯+8万円/歯×前歯2歯+消費税6万3250円)
(5) 7月2日,B医師が,原告に対し,補綴費用の一部としてまず70万円を次回(7月9日)の診療の際に支払うよう求めたところ,同月9日,原告は,被告に対し,132万8250円全額を支払った。
同月9日,B医師は,歯科技工所に対し,メタルフレームの製作を発注した。
(6) 8月6日の診察
B医師が,それまでに製作されたメタルフレームを試適しようとしたところ,原告は,「最初からメタルフレームでは作ってほしくない。レジン製の仮歯で形態を確認してからメタルボンド冠を作ってほしい。」と言って,その試適を拒否した。
そこで,B医師は,歯科技工所に対し,上記メタルフレームと同形態のレジン製暫間被覆冠の製作を発注した。
(7) B医師は,9月3日,レジン製暫間被覆冠(本件レジン製仮歯)を試適し,以後,12月17日に至るまで,原告の要望に応じて,医学的に相当な範囲で,上記暫間被覆冠の形態の調整,咬合挙上,支台の再製作,保持孔(金冠等を取れにくくするために支台や歯質に作る穴)形成等を行った。
(8) 12月17日の診察
原告は,B医師に対し,左上4ないし7番,左下6,7番について,尖っている頬側咬頭を丸くし上下を面で接触させるよう求めた。しかし,点接触が正常な咬合の基本といえるのであり,面接触にすると外傷性咬合になることが多い。そこで,B医師は,かかる原告の要望は医学的に相当ではないと判断し,これを原告に説明した。しかし,原告が納得しなかったため,B医師は,原告の要望を容れず,点接触になるように暫間被覆冠の形態を調整した。
また,原告は,B医師に対し,左上4番について,その形態を下顎に似せるとともに,中心溝を口蓋寄りにするよう求めた。しかし,そのようにすると,左上4番の口蓋側咬頭が下顎と全く咬合しなくなってしまう。そこで,B医師は,かかる原告の要望は医学的に相当ではないと判断し,これを原告に説明した。しかし,原告はその形態を主張して譲らず,左上4番について,口蓋側に入れ,中心溝を口蓋寄りにするよう求めた。
そこで,B医師は,為害作用のあるところは試適と調整を繰り返しながら原告の要望との接点を見出すことにし,原告に対し,頑張ってやってみましょうと答えた。
(9) 1月7日の診察
原告は,レジン製暫間被覆冠(本件レジン製仮歯)を装着した上での咬合については納得した。しかし,形態については依然として納得せず,レジン製暫間被覆冠では形態がよく分からないとして,金属製の仮歯を作って見せてほしいと述べた。
そこで,B医師は,金銀パラジウム合金で金属冠(仮歯)を製作することとした。
(10) 1月14日の診察
原告は,B医師に対し,右上3番の被覆冠の幅を少し小さくし,その分,右上2番の被覆冠の幅を広げてほしいと要望した。
しかし,最終補綴物にセラミックを使用するとどうしても厚みが生じてしまうため,右上3番の被覆冠の幅を小さくするには歯牙を削る必要があるところ,原告の右上3番の支台は前医の下で非常に細く形成されており,これ以上削ると折れてしまう危険があった。
そこで,B医師は,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望を採り入れた金属冠を製作することとした。
また,原告は,左上4番について,本件レジン製仮歯より小さく,かつ,噛まなくてもよいから下顎に似せてほしいと要望したが,B医師は,これについても,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望を採り入れた金属冠を製作することとした。
(11) 2月17日,B医師は,右上2ないし7番,左上4番,右下5ないし7番及び左下6,7番については単冠の金属冠を,左上5ないし7番については金属製ブリッジをそれぞれ仮着した。
(12) 2月18日の診察
原告は,B医師に対し,左上4番の形態をはじめ金属冠の形態が全く原告の要望どおりになっておらず,これ以上通院しても無駄であると述べて,治療を拒否し,本件診療契約を解除する旨の意思表示をした上,治療費の返還を求めた。
2 前記前提事実及び上記1の認定事実(以下「前提事実等」という。)に基づいて,まず,本件診療契約の解除による原状回復請求について検討する。
(1) 本件診療契約における合意及び被告の債務
原告は,本件診療契約において,原告の要望(本件要望書による要望(ただし,本件要望書の④は除く。)及び本件口頭要望事項の要望)どおりの補綴物を製作する旨が合意されたと主張する。
しかしながら,いわゆる診療契約は,歯科に係るものも含めて,一般に,その性質上,医師ないし歯科医師が結果の達成(仕事の完成)を請け負う契約ではなく,医師ないし歯科医師が医学的な知見及び技術に基づき最善を尽くして診療を行うことを委託されるという準委任契約であると解される。そして,医師ないし歯科医師は,専門家として,患者の要望が医学的に相当でない場合には,これに従ってはならないというべきである。
本件のような歯の補綴治療に係る診療契約についても,程度の差はあっても,事は同様である。すなわち,歯の補綴治療においては,失われた歯質ないし歯を人工物(補綴物)によって補う治療であるがゆえに,医学的見地からして,食物を摂取するための咀嚼等の機能の回復ということが重視されなければならないし,他の疾患を惹起させないようにすることも重視されなければならないのであって,歯科医師としては,患者から審美的な観点等での要望があったときでも,それが上記のような医学的見地からして相当でない場合には,これに従ってはならないというべきである。また,上記のような重視すべき点を考慮して補綴治療を行わなければならないことから,単に物を作るのとは異なって,あらかじめ補綴物の形状等の結果の達成を約束することができるような性質のものではない。
以上のとおりであるし,B医師は,本件診療契約締結の際,原告からの要望に対し,「歯科技工士と相談しながら,できる限り要望に沿うように努める。」旨を述べたというのである(なお,原告本人も,「技工士さんと相談しながらするけれども,一応希望に沿うようには努める,というふうなお話でした。」と供述している。)から,本件診療契約においては,原告主張の如く原告の要望どおりの補綴物を製作する旨が合意されたとは認められず,被告において,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望に沿うような補綴物を製作することに努める(最善の努力をする。)という債務を負っていたにすぎないというべきである。
(2) 上記のとおりであるから,本件において,原告の要望どおりの補綴物が製作されなかったとしても,そのことから直ちに被告に債務不履行があるということはできない。
もっとも,被告は,医学的に相当な範囲で,できる限り原告の要望に沿うような補綴物を製作することに努める(最善の努力をする。)という債務を負っていたのであるから,この債務の不履行があったか否かについて検討する。
原告は,前記第2の2(原告の主張)(1)イの①ないし③の点を指摘する。しかしながら,前提事実等に証拠(乙A1,2,5,被告代表者)を併せると,①(奥歯)に関しては,奥歯には凸凹のあることが正常な咬合の基本であって,奥歯の咬合面が平らになると,物を噛むことができなくなり,その結果,他の部分で噛むようになって,当該部分に負荷がかかりすぎ,本件では犬歯等のセラミックが破折することが予測されること,②(左上4番)に関しては,原告の要望に従うと,口蓋側咬頭が下顎と咬合しなくなること,③(右上2番と3番)に関しては,原告の要望に従ってセラミックを製作すると,最終補綴物に厚みが生じてしまうことから,右上3番の幅を狭くするためには歯牙を削る必要があるところ,初診前から右上3番の支台は細く形成されており,それ以上削ると破折する危険があること,なお,原告主張の歯と歯の隙間の点に関しては,原告の要望に従って歯冠部の根元部分まで歯と歯の隙間が狭くなるようにすると,炎症を起こし,ひいては歯周病に至るおそれがあること,以上の事実が認められるし,また,本件金属冠は最終補綴物ではなく,形状等について修正がなお可能な段階であり,B医師としても,形状について原告から更なる要望があれば,調整をしようと考えていたにもかかわらず,原告が一方的に治療を受けるのを中止したことも認められる。なお,前提事実等によれば,そもそも,原告がホワイトワックスを盛ったメタルフレームの試適を拒否したことが,形状に関する原告の要望を客観的に把握することを難しくしたものともいえる。
これらに照らすと,本件レジン製仮歯や本件金属冠の形状に原告の要望に従っていない点があるにしても,直ちに上記債務の不履行があるということはできない。
他に,本件全証拠を検討してみても,上記債務の不履行があったと認めるに足りる証拠はない。
(3) 上記(2)のとおり,被告に本件診療契約上の債務不履行があったとはいえないから,準委任契約が一方当事者の債務不履行を理由に解除された場合における解除の遡及効を肯定したとしても,本件診療契約の債務不履行解除に基づく原状回復請求として既払いの治療費全額の返還を求める原告の請求は理由がない。
ところで,本件診療契約は準委任契約であり,準委任契約はいつでも解除(解約)することができる(民法656条,651条1項)のであるから,原告が2月18日にした本件診療契約を解除する旨の意思表示は債務不履行を理由とする解除としては効を奏さないにしても,本件診療契約は同日をもって原告による解除(解約)により終了したものと解するのが相当である。しかして,本件診療契約に基づいて本件補綴治療を行う債務は,同日時点では,最終補綴物の製作,装着が行われておらず,履行の途中であったといえる。
このように(準)委任契約が受任者の責めに帰すことのできない事由により履行の途中で終了した場合,そのような場合でも報酬全額を得ることができる旨の特約がない限り,受任者は,履行の割合に応じて報酬を受けることができるにとどまり,既に受領した報酬のうち履行の割合に応じた報酬を超える分については,これを委任者に返還すべき義務を負うものと解するのが相当である(原告の本件診療契約の解除による原状回復請求は,このような返還請求を含むものと解される。)。
上記特約の有無についてみるに,被告医院においては,「患者さんの都合による中止の場合,一旦受領した治療費は返還しない」ことにしていたようであるが,この点について原告との間で合意したと認めるに足りる証拠はない。なお,被告は,本訴において,上記特約の主張はせず,上記のように既に受領した報酬のうち履行の割合に応じた報酬を超える分を返還すべきことを前提とした主張をしている。
そこで,本件における履行の割合に応じた報酬ないし治療代についてみると,前提事実等に証拠(乙A4の1ないし7,5,被告代表者)及び弁論の全趣旨を併せると,前記第2の3(被告の主張)(3)のとおりであることが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
したがって,被告は,原告に対し,23万4559円を返還すべきことになる。
3 説明義務違反に基づく損害賠償請求について
(1) 前記第2の2(原告の主張)(2)アの(イ)(治療費不返還の取り決めについての説明義務違反)について
上記2に判示したとおり,本件においては,治療費不返還の合意が成立したとは認められないのであるから,この点についての説明義務違反をいう原告の主張は失当である。
なお,上記2に判示したとおり履行の割合に応じた報酬(治療費)は返還する必要がないのであるが,この点については,法律上の解釈によるものであって,その説明をすべき義務はない。
(2) 同(ウ)(廉価な材料による補綴物の製作についての説明義務違反)について
前記前提事実(2)のとおり,原告は,初診時において 「基礎の金属部分,,表面の白い部分,共に一番丈夫で長持ちする材料で作って下さい。」と要望した。そして,本件全証拠を検討しても,補綴治療において最終補綴物を製作する前に別の廉価な材質による補綴物を製作するのが通常であるというような事情も窺われない。
そうすると,原告主張のような説明義務があるとはいえない。
(3) 同(ア)(要望のうち不可能な点を説明すべき義務の違反)について
ア 前提事実等によれば,初診時(6月4日)において,原告は,B医師に対し,自己の要望どおりの補綴治療をしてくれる歯科医院がなかなか見つからないことも告げた上,「不可能な点がありましたら,事前に教えて下さい。」として,主として審美目的のもとに,各種の要望(本件要望書による要望及び本件口頭要望事項の要望)をしたことが認められる。
そうとすると,B医師としては,初診時において,原告に対し,上記要望事項の中に医学的に相当でなかったり歯科技工的に著しく困難であるなどの理由で実現が不可能と判断されるものがあれば,その旨を説明し,実現が可能かどうかその時点では判断することができないものがあれば,その旨を説明して,それでもなお被告医院で補綴治療を受けるかどうかを選択する機会を与える義務があったというべきである。
イ 初診時におけるB医師の原告に対する説明について
前認定のとおり,B医師は,本件要望書の④については,技術的に困難であることなどを説明して,原告を翻意させたが,その余の要望事項については,最終的には,「歯科技工士と相談しながら,できる限り要望に沿うように努める。」旨を述べたのである。
ところで,原告の主張に徴すると,ここで検討すべき説明義務の対象となる要望事項は,本件要望書の⑤(奥歯の凸凹)並びに本件口頭要望事項のうち左上4番の形状に係るもの及び右上2番と3番の形状に係るもの(以下,これらを併せて「対象要望事項」という。)である。
しかして,対象要望事項は,その性質上,補綴治療開始前の時点でその実現可能性の有無を正確に判断することは難しく,補綴治療の過程で具体的に判断するしかないことが推察される。そして,前認定のとおり,B医師も,対象要望事項については,補綴治療を開始する前の時点では,果たして原告がどの程度のことを要望しているのかを正確に把握することができないため,できる限り要望に沿うように努めるということで原告の了解を得て治療を開始し,その後,試適と調整を繰り返しながら徐々に原告の要望する形状を把握して,最終補綴物を製作しようと考えたというのである。
また,「歯科技工士と相談しながら,できる限り要望に沿うように努める。」との説明を受ければ,通常,場合によっては要望どおりにならないこともあるということがわかり得るというべきである。
こうしてみると,対象要望事項について,B医師が「歯科技工士と相談しながら,できる限り要望に沿うように努める。」旨を述べたことは,事の性質に即した相当な説明の仕方であるというべきであって,説明義務違
反をいうことはできない。
ウ 他に,前提事実等及び本件全証拠を検討してみても,本件において説明義務違反をいうべき点は見当たらない。
(4) 以上のとおりであるから,説明義務違反に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
4 以上の次第で,原告の本訴請求は,23万4559円及びこれに対する平成18年4月7日(本訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第14部
裁判長裁判官
貝 阿 彌 誠
裁判官
片 野 正 樹
裁判官
宮 川 広 臣