判例
商法会社法判例百選第4版A13
基準日の設定に不備がある株主総会決議の効力
全文
東京高判平成27年3月12日(金判1469号58頁)
北海道大学准教授
三宅 新 みやけ はじめ
株式会社Y(被告・控訴人=被控訴人)は、普通株式のみ発行の上場会社であった。Yは、全部取得条項付株式を利用した少数派株主の締出し(スケイズアウト)を企図し、平成25年5月14日の臨時株主総会でそれを可能とする定款変更を付議したが否決された。その後Yは、同年6月28日の定時株主総会において、改めて同様の定款変更等を付議して可決された。この定款変更により、Yの普通株式すべてに全部取得条項が付され、種類株主総会の議決権行使に係る基準日は定時株主総会のそれ(3月31日)と同一とされた。同日、その基準日に基づき、全部取得を実施する種類株主総会決議が可決された。しかし、種類株主総会の基準日設定に関する公告(会社124条3項)はなく、変更前の定款には種類株主総会の基準日に関する定めもなかった。そのため、スケイズアウトを受けたXら(原告・被控訴人、原告・控訴人=被控訴人)が、上記種類株主総会決議の取消し等を求めて訴えを提起した。
原審(東京地判平成26・4・17金判1444号44頁)および本判決は、会社法124条の趣旨につき、「株主権を行使できる者は、本来は、当該権利行使時点の株主名簿上の株主であるが、株主が多数いる会社においては誰がその時点
における株主かを把握することが容易ではないことから、会社が一定時点の株主名簿上の株主に権利を行使させるようにするための基準日制度を設ける一方、基準日設定公告制度を設けることにより、基準日及び基準日株主が行使できる権利の内容を株主に知らせ、株式を取得したにもかかわらず株主名簿の名義書換をしていない株主に対し、権利行使のために株主名簿の名義書換をする機会を確保することにある」とした。そして、その趣旨および同条3項但書から、同項の定款の定めは、「基準日の2週間前までに存在することが必要であり、[種類株主総会の議決権行使に係る基準日についても同様である]と判示し、上記種類株主総会決議の取消しを認容した。
確かに、普通株式のみの会社が種類株式に関する基準日を定めていることは通常なく、またそのような会社が種類株式発行会社となる定款変更をした同日に種類株主総会を開催することは何ら珍しくない。そのため、その場合の基準日が普通株式に関する基準日と同一にされても、一見大きな弊害はないようにも思われる。しかし、本件ではYがスケイズアウトを実現させるため、種類株主総会の議決権行使者を事後的な基準日の操作によって恣意的に選択しようと思えばできる状況にあった。この背景が結論に影響を及ぼした可能性もあり、事案によっては裁量棄却となることもあるだろう。
[参考文献] 吉本健一・金判1478号2頁(判旨反対)およびそこで引用の諸文献。
# II 株式会社 — (3) 株主総会