判例
刑事訴訟法刑事訴訟法判例百選第11版A33
住居侵入、強盗
補強法則と公判廷の自白
全文
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人瀬尾蔵治上告趣意書第一点について。
しかし原判決挙示の証拠によれば、被告人は窃盗をするつもりでA、Bと一緒に判示C方に侵入したところ家人に発見されたためA、Bはそれぞれ小刀、出刄庖丁を持つて奥の間に行きこれを家人につきつけて判示の通り脅迫し金品を物色したので被告人もA、B等が家人を脅迫して金品を取ろうとするものであることを知りながらその際Bから渡された出刄庖丁を持つたまゝ同家炊事場に於いて米を取出す等、同人等と行動を共にし結局三人で判示金品を奪ひ取つた事実を認めることができる。してみると被告人がA、B等において家人を脅迫して金品を取ろうとするものであることを知つたときから、被告人とA、Bとの三人の間に強盗をしようという通謀があつたものといえる。原判決が冒頭に被告人はA、Bと共謀の上と判示したのは右の説明した通謀ができた事実を指すものと解せられる。そうすれば本件事犯は被告人等三名の間に強盗をしようとの通謀があつてそれに基いて行はれたものであるから被告人は現実には少しも暴行脅迫を行はなかつたとしても、A、Bが脅迫をして財物を奪取した以上被告人もA、Bと同様共同正犯として強盗罪の責任あること勿論であつて、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
同第二点について。
裁判所法第二六条第二項第二号によれば、刑法第二三六条(強盗)、第二三八条(●強盗)及び第二三九条(準強盗)の罪は、地方裁判所の合議体で取り扱うことを必要とせず単独制でも取り扱い得る旨を定めているが、これをもつて所論のごとく憲法違反と断ずることは当を得ない。かかる裁判所の事物管轄及び構成に関する事柄は、憲法第八一条の違憲審査権に関する場合を除いては、他に憲法に特別の規定がないのであるから、国憲の最高機関であり国の唯一の立法機関である国会が、国民の基本的人権を故なく害せざる限り、事件の性質、種類、裁判所の機能、国の実力その他諸般の事情を考量して時宜に適するよう法律をもつて規定するところに一任されていると解すべきものと言わなければならない。すなわち、すべては立法当時における理想的な又現実的な国の立法政策によつて決せらるべき問題である。そこで、前記裁判所法の規定を設けた主な立法理由は、強盗及び準強盗の罪は短期一年以上のいわゆる重罪中の他の犯罪に比すれば、その性質、態様、手段が比較的概ね単純であり従つて通常審理が容易であること、これと関連の多いそして相似た類型の窃盗、暴行、脅迫の罪(何れも短期一年未満の罪)と同様な取り扱をするを適当とすること並びに憲法の要請する審判の迅速のために全裁判所の機能の能率的な運営を図つたこと等である。しかし、前記規定は、強盗及び準強盗の罪を常に地方裁判所の単独制で審判せしめるというのではなく、事件の複雑、困難、重要性その他特殊の事情がある場合には、合議体で審理及び裁判をする旨の決定を合議体ですることによつて、事件はいつでも合議体で取り扱われることとなるのである(前同項第一号)。
かくて、事件の取扱い方に機動性と弾力性を与え、総体として妥当な効率を挙げ得るように定められている。それ故に、上述の裁判所法の規定は、すべて法律をもつて定め得ることを当然定めたものであつて、憲法の禁ずるような不合理な不公平な差別的裁判審理を定めたものでもなく、又公平な組織、構成を有する裁判所の裁判を受ける国民の権利その他の基本的人権を剥奪したものでもない。従つて、論旨は理由なきものである。
以上の理由により刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
検察官 松岡佐一関与
昭和二十三年七月二十九日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官
塚崎直義
裁判官
長谷川太一郎
裁判官
沢田竹治郎
裁判官
霜山精一
裁判官
栗山茂
裁判官
真野毅
裁判官
島保
裁判官
藤田八郎
裁判官
齋藤悠輔
裁判官
岩松三郎
裁判官
河村又介
裁判官
小谷勝重は差支につき。署名捺印することができない。