判例
刑法刑法判例百選Ⅰ第8版100
窃盗被告事件
接続犯
全文
主 文
原判決を破毀する。
本件を東京高等裁判所に差戻す。
理 由
弁護人田沼秀男の上告趣意について。
原審の確定した事実によると被告人は長男Aと共謀の上昭和二二年一二月一四日午後十時頃から翌一五日午前零時頃までの間三回にわたつて栃木県塩谷郡a町大字b字c所在B農業会b(第d号)倉庫で同農業会倉庫係C保管の水粳玄米四斗入三俵づつ合計九俵を窃取したものであるというのであつて、原審は右事実を併合罪として処断しているのである、ところが右三回にわたる窃盗行為は、僅か二時間余の短時間のうちに同一場所で為されたもので同一機会を利用したものであることは挙示の証拠からも窺われるのであり、且ついずれも米俵の窃取という全く同種の動作であるから単一の犯意の発現たる一連の動作であると認めるのが相当であつて原判決挙手の証拠によるもそれが別個独立の犯意に出でたものであると認むべき別段の事由を発見することはできないのである。然らば右のような事実関係においてはこれを一罪と認定するのが相当であつて独立した三個の犯罪と認定すべきではない。それ故原審が証拠上別段の事由の認められないに拘わらず右三回の窃盗行為を独立した三個の犯罪行為と認定したことは実験則に反して事実を認定した違法があると云わなければならない。この点に関する論旨は理由があり原判決は破毀を免れない。よつて爾余の論旨に対する説明を省略し刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四七条、第四四八条ノ二により主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
検察官 橋本乾三関与
昭和二四年七月二三日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官
霜山精一
裁判官
栗山茂
裁判官
小谷勝重
裁判官
藤田八郎