判例
行政法行政法判例百選Ⅱ第8版184
農地買収処分取消請求
違法判断の基準時
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人森整治、原矢八の上告理由は別紙記載のとおりである。
上告理由第一について。
論旨は、原判決主文をもつてしては、本件買収計画中の如何なる部分についての訴願裁決を取り消したのか不明である。このような内容の不確定な原判決は当然破棄さるべきであるというのである。
しかし、在村地主がいわゆる保有面積を超えて小作地を所有している場合に、小作地のどの部分を保有せしめるかは農地委員会が自作農創設特別措置法六条四項の趣旨に従い買収計画で定めるべきことであつて、本件の場合においても裁判所が本件買収計画のうち如何なる部分を買収から除外するかを定めるべきではない。従つて原判決が如何なる部分について取消すかを特定しなかつたことは正当であつて、原判決の趣旨は、上告人が本件訴願裁決で、被上告人に保有面積を認めないで定めた買収計画を是認したことを違法とし、如何なる小作地を買収から除外するかは農地委員会をして特定せしめる趣旨であつて、結局原判決は如上の趣意において、所論判決全部を取消すというに帰するものと解するを相当とする。従つて原判決に所論のような違法はなく論旨は理由がない。
同第二について。
論旨は原判決がすでに削除せられた自作農創設特別措置法附則二項を適用し本件買収計画の当否を判断したのは違法であるというのである。
しかし、行政処分の取消又は変更を求める訴において裁判所の判断すべきことは係争の行政処分が違法に行われたどうかの点である。行政処分の行われた後法律が改正されたからと言つて、行政庁は改正法律によつて行政処分をしたのではないから裁判所が改正後の法律によつて行政処分の当否を判断することはできない。本件買収計画は昭和二二年一二月二六日法律二四一号による改正前の自作農創設特別措置法附則二項によつて定められたのであるから、原判決が本件買収計画が右附則二項による計画として適法であるかどうかを審理したのは当然である。前記法律二四一号附則二条は改正法施行前に前記附則二項による買収計画に関してされた手続は改正後の法律の六条の二、三、五の規定によりされた手続とみなす旨の規定であることは論旨のとおりであるが、右は改正前の法律による手続が改正法による手続としての効力を有する趣旨の規定に過ぎず、改正前の法律にてらして違法であつた計画が法律の改正によつて適法になる理由はないのであるから、所論のように本件買収計画が適法であるかどうかについて改正後の法律によつて判断すべきものではない。論旨は理由がない。
同第三について。
論旨は要するに、原判決は前記改正前の法律附則二項の「相当」に関する解釈を誤つているというのである。
しかし、右附則第二項は「第三条第一項の規定による農地の買収については、市町村農地委員会は相当と認めるときは、命令の定めるところにより、昭和二十年十一月二十三日現在における事実に基いて第六条の規定による農地買収計画を定めることができる」と規定しているのであつて、市町村農地委員会は相当と認められる場合に限つて右買収を行うことができるものであることは当然であり、原判決は判示諸般の事情を勘考して、本件買収は相当でないと判断したものであつて、原判決認定の諸般の事情からみれば本件買収を以て相当ならずとした原判決の判断は正しいと云わなければならない。所論はその独自の見解に基いて、右「相当性」を争うに過ぎないものであつて採るを得ない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官
栗山茂
裁判官
小谷勝重
裁判官
藤田八郎
裁判官
谷村唯一郎