判例
商法商法判例百選12
商法 14 条(会社法 9 条)(最一小判昭和 41・1・27)
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人木崎為之の上告理由一について。
原審の確定したところによれば、被上告会社は、昭和二九年七月一〇日頃(あるいは同月六日)、上告会社大阪出張所の名義を使用して営業をすることを黙認されて木材業を営んでいた訴外Dとの間で、木材の売買に関する一般的な契約(現品は、Dから、具体的に木材の品種、数量等を明示して注文するに応じて逐次発送することとし、代金は現品受取の翌月一〇日頃支払の約)を締結し、これに基づき、昭和二九年七月一五日頃から同年九月一日頃までの間、Dの具体的な注文に従い合計額少くとも一九八万三、九四一円相当の木材を送付して引き渡したというのである。ところで、商法二三条の名義貸与者の責任は、その者を営業者なりと誤認して取引をなした者に対するものであつて、たとえ誤認が取引をなした者の過失による場合であつても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をなした者に重大な過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れるものと解するのを相当とする。そして右取引に関する事情として原審が確定した事実関係の下においては、いまだ被上告会社がA株式会社大阪出張所ことDの営業の主体を上告会社と誤認するにつき重大な過失があつたものと断定しがたく、従つて、この点に関する原判決判示は正当であつて、所論の違法は認められない。所論は採るを得ない。
同二について。
原判決が、上告会社のごとき規模の木材会社の出張所が一般的に本件のごとき総額二〇〇万円程度の取引の発注業務を取り扱うものでないということを認めるべき的確な資料も存しない旨判示したのは、上告会社の規模と本件取引総額を対比し、一般の取引観念に照らすと本来の商号(「A株式会社」)と使用許諾商号(「A株式会社大阪出張所」)との同一性が失われると認めるべき資料がないという趣旨であることは判文上窺えるところであり、原審の挙示の証拠関係に照らせば、右判断は是認でき、その間所論の違法は認められない。所論は原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官
入江俊郎
裁判官
長部謹吾
裁判官
松田二郎
裁判官
岩田誠