判例
刑事訴訟法刑事訴訟法判例百選第11版A28
保釈許可取消、保釈請求却下の決定に対する特別抗告
保釈と余罪
全文
主 文
本件抗告を棄却する。
理 由
一、弁護人松木武、同吉田孝美の抗告趣意第一点について。
被告人が甲、乙、丙の三個の公訴事実について起訴され、そのうち甲事実のみについて勾留状が発せられている場合において、裁判所は、甲事実が刑訴法八九条三号に該当し、従つて、権利保釈は認められないとしたうえ、なお、同法九〇条により保釈が適当であるかどうかを審査するにあたつては、甲事実の事案の内容や性質、あるいは被告人の経歴、行状、性格等の事情をも考察することが必要であり、そのための一資料として、勾留状の発せられていない乙、丙各事実をも考慮することを禁ずべき理由はない。原決定も、この趣旨を判示したものと認められる。所論引用の高松高等裁判所昭和四一年一〇月二〇日決定(下級裁判所刑事裁判例集八巻一〇号一三四六頁)は、勾留状の発せられている起訴事実について裁量保釈が適当と認められる場合には、勾留状の発せられていない追起訴事実の審理のために被告人の身柄拘束の継続が必要であることを理由として保釈を拒否すべきではない旨を判示したものであつて、本件と事案、論点を異にし、適切ではないから、所論のうち判例違反の論旨は、前提を欠くことに帰する。その余は、単なる法令違反の主張であつて、結局、所論は、すべて刑訴法四三三条一項の抗告理由にあたらない。
二、同第二点について。
所論は、憲法三一条、三四条違反をいう点もあるが、その実質は、すべて事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四三三条一項の抗告理由にあたらない。
三、同第三点について。
所論は、憲法一四条違反をいうが、原決定は、単に被告人が前科八犯を有する元暴力団員であるとの理由のみによつて裁量保釈の規定を厳格に解釈して保釈請求を却下したものではないことは、原決定文上明らかであるから、論旨は、前提を欠き、刑訴法四三三条一項の抗告理由にあたらない。よつて、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和四四年七月一四日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官
飯村義美
裁判官
田中二郎
裁判官
下村三郎
裁判官
松本正雄
裁判官
関根小郷