判例
知的財産法商標・意匠・不正競争判例百選第2版9
審決取消請求事件
他人の氏名・名称等を含む商標(1)
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人馬瀬文夫、同福井秀夫、同山上和則、同佐藤正年、同木村三朗の上告理由第一点について
株式会社の商号は商標法四条一項八号にいう「他人の名称」に該当し、株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた部分は同号にいう「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきであつて、登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた略称を含むものである場合には、その商標は、右略称が他人たる株式会社を表示するものとして「著名」であるときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である。ところで、被上告人が登録を受けた「A」なる商標は、上告人の商号である「株式会社A」から株式会社なる文字を除いた部分と同一のものであり、他人の名称の略称からなる商標にほかならないのであつて、被上告人がその登録を受けることができないのは、「A」が上告人を表示するものとして著名であるときに限られるものというべきである。以上と同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論引用の大審院判例は、「他人ノ商号ヲ有スル商標」は登録を受けることができない旨規定するにとどまり、他人の商号の略称を含む商標についてはなんら規定していなかつた旧商標法(大正一〇年法律第九九号)のもとにおける判例であつて、本件に適切でない。論旨は、採用することができない。
同第二点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、「A」が商標法四条一項八号にいう「他人の名称の著名な略称」に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
同第三点及び第四点について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係のもとにおいて、本件商標は商標法四条一項一五号及び一六号に違反して登録されたものであるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官
木下忠良
裁判官
鹽野宜慶
裁判官
宮崎梧一
裁判官
大橋進
裁判官
牧圭次