判例
刑法刑法判例百選Ⅱ第8版109
贈賄被告
抽象的職務権限の変更と賄賂罪の成否
全文
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人森智弘の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
なお、所論にかんがみ職権により判断するのに、贈賄罪は、公務員に対し、その職務に関し賄賂を供与することによつて成立するものであり、公務員が一般的職務権限を異にする他の職務に転じた後に前の職務に関して賄賂を供与した場合であつても、右供与の当時受供与者が公務員である以上、贈賄罪が成立するものと解すべきである(最高裁昭和二六年(あ)第二五二九号同二八年四月二五日第二小法廷決定・刑集七巻四号八八一頁、同二六年(あ)第二四五二号同二八年五月一日第二小法廷判決・刑集七巻五号九一七頁参照)。これを本件についてみると、被告人は、外一名と共謀の上、原判示Aに対し、兵庫県B部C課D係長としての職務に関し現金五〇万円を供与したというのであつて、その供与の当時、右Aは兵庫県住宅供給公社に出向し、従前とは一般的職務権限を異にする同公社E部参事兼E課長としての職務に従事していたものであつたとしても、同人が引き続き兵庫県職員(B部F課課長補佐)としての身分を有し、また、同公社職員は地方住宅供給公社法二〇条により公務員とみなされるものである以上、被告人らの右所為につき贈賄罪が成立するものというべぎであり、これと同旨の原判断は相当である。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和五八年三月二五日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官
大橋進
裁判官
木下忠良
裁判官
監野宜慶
裁判官
宮崎梧一
裁判官
牧圭次