判例
刑法刑法判例百選Ⅰ第8版74
窃盗
間接正犯
全文
主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中五〇日を本刑算入する。
理 由
弁護人恵古和伯の上告趣意は単なる法令違反の主張であり、被告人本人の上告趣意は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決及びその是認する第一審判決の認定したところによれば、被告人は、当時一二歳の養女Aを連れて四国a等を巡礼中、日頃被告人の言動に逆らう素振りを見せる都度顔面にタバコの火を押しつけたりドライバーで顔をこすつたりするなどの暴行を加えて自己の意のままに従わせていた同女に対し、本件各窃盗を命じてこれを行わせたというのであり、これによれば、被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行つたと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和五八年九月二一日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官
谷口正孝
裁判官
団藤重光
裁判官
藤崎萬里
裁判官
中村治朗
裁判官
和田誠一