判例
民事訴訟法民事執行・保全判例百選第3版19
債権差押命令に対する執行抗告事件
執行の停止・取消し
全文
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人藤原達雄の上告理由第一及び第二について
所論の点に関する原判決の趣旨とするところは、上告人は、訴外D産業株式会社(以下「D」という。)の取締役として、その代表取締役Eの職務の執行を監視し、違法行為を防止すべき義務を負つていたにもかかわらず、右義務を尽くすどころか、かえつてDの倒産が不可避であることを予測し、株式会社Fアルミニユーム製作所のDに対する五〇〇〇万円以上の債権を本件二隻の輸出代金から全額一挙に回収しようと考え、このような回収方法をとるときには本件二隻の輸出に関し回航料金債権を取得する被上告人がその弁済を受けることができなくなることを十分予想しながら、あえてDの代表取締役Eをして被上告人と本件二隻の輸出先への回航に関する契約を締結させ、被上告人に右回航をさせて回航代金相当の損害を加えたとし、上告人の右の違法行為がDの取締役としての職務の懈怠にあたるというにあることは、判文上明らかであり、右の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。上告人の監視義務懈怠に関する所論の原判示部分は、措辞に適切さを欠くところがあるが、その趣旨は右に説示したように解されるから、原判決に所論理由不備、理由そごの違法はなく、その余の所論は、原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決の結論に影響のない事項についてその違法をいうものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第三及び第四について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はなく、右事実関係のもとにおいて、上告人が被上告人に対して賠償すべき損害額を定めるにあたつては被上告人にも一割の過失があるから右の限度で過失相殺をするのが相当であるとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の自由裁量に属する事項についての違法をいうものにすぎず、いずれも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官
矢口洪一
裁判官
藤崎萬里
裁判官
谷口正孝
裁判官
和田誠一
裁判官
角田禮次郎