憲法憲法判例百選Ⅱ第7版113
現行犯と令状主義の例外―憲法35条の「33条の場合」をどう読むか,収税官吏の無令状捜索・差押えは許されるか―国税犯則取締法3条1項,行政調査と憲法35条―刑事手続か行政手続かの境界
判例ID: constitutional~s-30-04-27-s-g-j-01
国税犯則取締法事件(最大判昭30.4.27),酒造税法違反幇助被告事件(最判昭30.4.27大法廷),昭和24年(れ)第1143号(最高裁大法廷昭和30年4月27日判決)
昭和30年4月27日 最高裁判所大法廷 判決
昭和24(れ)1143酒税法違反幇助棄却刑集 第9巻5号924頁
事実
1) 焼酎の密造の開始
訴外の朴成煥は、政府の免許を受けずに焼酎を製造していた(免許制に反する行為として、少なくとも違反の問題が生じる)。
2) 正木慎一の関与(幇助とされた行為)
被告人の正木慎一は、朴成煥から製造場所の手配を頼まれ、場所を斡旋・貸与したうえ、その間「留守番」をするなどして密造を手助けしたとして、酒税法違反の幇助()で起訴・有罪認定の対象となった。
3) 収税官吏による無令状の臨検・捜索・差押え
収税官吏である大蔵事務官(中北信男ら)は、焼酎密造に関わる現場(被告人の居宅であったとされる)において、裁判官の許可状(令状)を得ないまま、密造酒類・もろみ等や製造に用いられた機械器具・容器などを捜索して差し押さえた。
この処分は「必要ニシテ且急速ヲ要シ」かつ裁判官の許可を得られない場合に「犯則ノ現場ニ於テ」収税官吏が同種の処分を行えるとするに基づくものとして位置づけられ、逮捕を伴わないのに無令状で住居等に立ち入った点が強く争われた。
4) 顚末書の作成と、証拠としての採用
大蔵事務官らは、差押えの経緯や押収物などを記載した顚末書(に基づく書面)を作成した。
第1審(和歌山地方裁判所)および原審(大阪高等裁判所)は、顚末書を含む証拠により正木慎一の幇助を認定して有罪とし、顚末書が自白の補強証拠になり得るとも判断した。
5) 上告と憲法上の争点の形成
正木慎一の弁護人は上告し、(i) 住居等への侵入・捜索・押収はが原則として令状を要求する、(ii) 例外として同条が掲げる「の場合」とは、司法官憲による(現行犯)逮捕と結び付く場合に限られる、(iii) 収税官吏は司法官憲ではなく、逮捕もないのに無令状で強制処分を許すは違反で無効、(iv) それに基づく顚末書は違法収集証拠として証拠能力を否定すべきだ、と主張した。